アンハッピー・ウエディング〜前編〜
更に。

「僕も遠慮しますよ」

「!乙無の兄さんまで」

乙無も遊んでいる余裕はないらしい。

その理由は、勿論…。

「僕には、邪神の眷属としての役目がありますから。休日を呑気に過ごしている暇なんてないんです」

「またそれかよ」
 
忙しいんだな、邪神の眷属って。

ブラックな職場だ。邪神だけに。

「良いじゃん、たまには眷属サボったって。週休二日にしようぜ」

「…イングレア様より託された崇高なお役目を、サボれとは…。全く人間という生き物は…」

「なー頼むよ。二人共。一日で良いから」

と言って、雛堂は両手を合わせて拝むように頼んできた。

「このままじゃ、チビ共の世話を押し付けられちまう。折角のゴールデンウィークなのに、そんなの御免だって」

…チビ共?

ともかく、雛堂がここまで頼んでいるのだから。

良いよ、と言ってあげたいのは山々なのだが…。

…こればかりは俺の一存じゃ決められないから、寿々花さんに相談かなぁ…。

「…分かったよ。時間が取れるか分からないけど…。善処する」

「マジか。頼むよ星見の兄さん。乙無の兄さんもさ。ちょっと、邪神様に有給頼んでさ」

神様に有給休暇申請…。

…出来んのか?

「何ですか、それは…」

「いつも言ってるじゃん。その邪神様ってのは平等な神様なんだろ?頼んだら、有給くらいくれるって」

「そういうことじゃないんですよ。あなた、イングレア様を何だと思ってるんですか」

まぁ、乙無はいつも邪神の眷属(笑)の役目を、いつも忠実(笑)に果たしてるからさ。

たまの休みくらい、神様も許してくれるんじゃないの?

心の広い平等な神様なんだろ?

「…やれやれ、全く…。分かりましたよ。検討しておきます」

雛堂の熱意に押し切られたのか、乙無はやれやれ、とばかりにそう言った。

行けたら行くわ、的な。

…それって、行かないフラグなのでは?

「そうそう、そうしてくれ。じゃあ二人共、自分楽しみにしてるわ。宜しくー」

…俺、まだ行けるとは言ってないんだけど。

やっぱり行けないってことになったら、断るの心が痛むパターンだな…。

帰って、寿々花さんに相談してみるしかないか…。
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