アンハッピー・ウエディング〜前編〜
しかし、寿々花さんはゴールデンウィークの予定、何かあるんだろうか。

一緒に遊びに行くような友達…は、残念ながら居ないようだが…。

とはいえ、外に遊びに行くんじゃなくても、ゴールデンウィークの予定なんていくらでも立てられる。

実家である無月院本家に帰省する…とか。

もし実家に帰省するなら、俺はその間、この家で比較的自由に過ごせるんだが。

雛堂の誘いに乗って、遊びに行くことも出来る。

でも、寿々花さんが実家に帰らないなら…。





「なぁ、寿々花さん。あんたゴールデンウィークはどうするつもりなんだ?」

夕食のときに。

そこのところを、俺は寿々花さんに聞いてみた。

「ほぇ?」

俺に質問されて、寿々花さんは箸を動かす手を止めた。

今夜のメニューは、餃子と麻婆豆腐である。

中華だな。

餃子は皮から包んだが、麻婆豆腐は市販の素を使って作った。

「ほぇ、じゃなくてさ…。ゴールデンウィークの予定を聞いてるんだよ」

「ゴールデンウィーク…?」

…知ってるよな?ゴールデンウィーク。

「4月末から5月の始めにかけて、そこそこ長い休みがあるだろ?」

「そういえば…毎年春になると長いお休みがあるね」

そう、それだよ。

しかし、ゴールデンウィークの予定を聞かれて、この反応となると…。

「何か予定があるのか?」

「うーん。この間のおままごとセットで遊ぶ」

つまり、何の予定もないと。

おままごとセットか…。いつもの週末と同じじゃないか。

そんなことだろうと思った。

「出掛ける予定とか、ないのか」

「そうだね…。何処か行こうかな?」

「実家には帰らないのか」

「…うーん…」

実家のことを聞かれるなり、寿々花さんは視線をきょろきょろと彷徨わせ。

そして。

「…帰んない」

だ、そうだ。

じゃ、やっぱりゴールデンウィークの間も、この家にいるんだな。

分かったよ。

「そうか…。じゃ、俺も残るかな…」

「私、おうちに帰った方が良いの?」

「別にそういう訳じゃねぇよ。どうせ、俺はこの家に残るつもりだったしな」

寿々花さんが帰省しようと、家に残ろうと…俺は帰る予定はなかったし。

それは良いんだけど…。

「ただ、ちょっと学校の…クラスメイトに、一日で良いから遊びに行かないかって誘われてな」

「えっ」

「一日だけ、出掛けても良いか?寿々花さん、一人で留守番出来るか」

「…」

返事の代わりに、視線をぐるぐるさせている寿々花さんである。

自信がないのか。そうなんだな?

俺も不安だよ。このお嬢様を家に一人で残していくなんて。

小学生でもあるまいに、高校生にもなってお留守番の心配をするとは。

「…自信がないなら、無理しなくて良いぞ。雛堂…いや、クラスメイトには上手く説明しておくから…」

雛堂には、「ごめん、やっぱり無理だった」と謝ろう。

俺が断った上に、乙無にまで「やっぱり無理です」と言われたら。

そのときは、雛堂の奴拗ねるだろうなぁ…。
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