アンハッピー・ウエディング〜前編〜
レンタルビデオ店の前で、雛堂と乙無と別れ。

俺はスーパーに寄って買い物をしてから、家に帰った。

まだ満腹状態だから、夕飯の買い物は寿々花さんの分だけにした。 

俺は白湯でも飲んでれば良いや。
 
何なら、食べ歩きのお土産も買ってあるしな。中華まんとドーナツ。

それより、気になるのは寿々花さんのことである。

…一応、ヘルプの連絡は入ってこなかったようだが。

ちゃんと留守番…してるよな?大丈夫だよな?

何だかんだ、レンタルビデオ店やスーパーに寄ったりして遅くなってしまったから。

寿々花さんがちゃんと留守番出来ているのか、途端に不安になってきた。

急ぎ足で帰宅し、戦々恐々としながら自宅の扉を開ける。

「ただいま、寿々花さん。戻ったぞ」

玄関の中に入って、ひとまずホッとした。

いつかのように、キッチンから凄まじい異臭が漂ってくるようなことはなかった。

良かった。勝手にキッチンを使うなという言いつけは、ちゃんと守ったらしい。

すると。

「…!悠理君だ」

ひょこっ、と奥のリビングから、寿々花さんが顔を覗かせた。

おっ、いたな。

「悠理君、おかえ…、う」

「う?」

てこてこてこ、とこちらに寄って来ようとした寿々花さんは、途中で足を止めた。

…どうした、何かあったかと聞こうとしたら。

すすす、と寿々花さんはリビングに戻っていった。

何がやりたいんだ。一体。

「…悠理君から、何だか凄い匂いがする…」

「…」

ごめん。原因は俺だった。

忘れてたよ。俺、今超絶にんにく臭いんだった。

歩くスメハラになってたんだ。

帰りのスーパーですれ違った人皆、臭かったろうな。

申し訳ない。 

異臭を放っていたのは、まさか俺の方だったとは…。

「サッポロ二番にんにくたっぷりラーメンみたいな匂いがする」

「にんにく食べまくったからな…。ごめん、すぐシャワー浴びてくるよ…」

ついでに、着てる服全部洗濯するよ。

家の中に、この凄まじいにんにく臭を撒き散らす訳にはいかない。

「シャワー浴びてから夕飯作るから、ちょっと待っててくれ。な?」

「私、お腹空いちゃった」

「ごめん。ちょっと待ってくれ」

さすがに、一度シャワー浴びて少しでも匂いを取らないと。

えぇと、まずお土産を置いて、それから着替えを取りに行って…。

と、一階にある自分の部屋に入ってから。

俺は、思わず足を止めた。

…何これ?
< 175 / 505 >

この作品をシェア

pagetop