アンハッピー・ウエディング〜前編〜
この寿々花さんが、大人しく良い子に留守番しているなど。 

期待した俺が馬鹿だったと。そういうことなのか。

まさか、探検と称して勝手に部屋に侵入していたとは。

それどころか、服や押し入れが荒らされまくってる。

かろうじて、下着を入れた引き出しは手つかずだったようで、それは安心した。

…いや、安心してる場合じゃないだろ。

「…あのなぁ、そりゃこの家はあんたのものだけど、人様の部屋に勝手に入るな。ましてや男の部屋に…」

「?」

駄目だ、きょとんとしていらっしゃる。

何が悪かったのか、全く分かっていないご様子。

「それより、悠理君」

それよりって何だよ。

「私、お留守番頑張ったんだよ」

褒めて褒めて、と言わんばかり。

寿々花さんに尻尾があったら、今頃千切れんばかりに振ってただろうな。

…そんな顔されたら、説教しようにも出来ない。

それに、なんかこう…いじらしくね?

俺の服を抱いて寝てた、とか聞かされたら…。

怒るに怒れないんだけど。

「…他には?他には、何も悪さしてないだろうな?」

俺の部屋に忍び込んだ以外は、何も悪いことはしてないよな?

「悪戯とかしてないよな?」
 
「悪戯なんてしてないよ」

「本当だろうな…?」

…すると。
 
「あ、そうだ。あのね、悠理君」

寿々花さんは、何かを思い出したらしい。

「何だよ」 

「大したことじゃないんだけど、悠理君の留守中に…」

「あぁ、電話でもかかってきたか?それとも来客か?」

「ううん、電子レンジが爆発しただけ。大したことじゃないけど、一応報告しておこうと思って」

「あぁ、そうなのか。分かった…」

と、軽く返事をしてから。

そのまま、たっぷり10秒。

…ん?

なんか今、さらっととんでもないこと言わなかった?

俺は、すぐさまキッチンに直行した。
 
そこで俺が目にしたのは、変わり果てた電子レンジの姿だった。

「…」

…もしかして、さっきレンタルビデオ店で見た電子レンジのホラー映画。

これのことだったんじゃねぇの?

これぞ、正しくインザ電子レンジ。

…って、笑い事じゃねぇんだよ。

留守番頑張ったからさ。寂しいのによく我慢したんだろうから。

部屋の中荒らされたくらいは、百歩譲って大目に見ようと思ってたけど。

電子レンジの破壊は、さすがに看過出来ないんだが?

一体何をやったら、電子レンジが爆発するようなことになるんだ?
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