アンハッピー・ウエディング〜前編〜
『二回目を観るほど気に入ったのかー。凄いな、星見の兄さんより遥かに度胸あるじゃん』

「…本当にな…」

肝が据わってるって言うか、怖いもの知らずって言うか…。

…怖いもの見たさってこと?

『そんなに気に入ったなら、また借りに行ったら?あのシリーズ、他にも何作が出てるよ』

そういや、そんなこと言ってたな。

階段とか…あとは電子レンジだっけ?

「嫌だよ…それも怖いんだろ?」

『おう。実は自分も昨日の夜、借りてきたイン・ザ・電子レンジを観たんだけどさー』

「…どうだった?」

『自分、多分あと一週間は電子レンジ使えねぇわ』

ほらな。言わんこっちゃない。

俺より遥かにホラー映画を見慣れた雛堂でさえ、トラウマで一週間も電子レンジ使えないって言ってるんだぞ?

ペーペーの俺が観たら、一生電子レンジ使えなくなる恐れがある。

嫌だよ、そんなの。電子レンジ便利なのに使えなくなるなんて。

押し入れからあんなモノが出てきて、冷蔵庫からもあんなモノが出てきて…。

その上電子レンジから何が出てきても、俺はもう驚かないからな。

『まぁ良いじゃん。妹ちゃんもお姉ちゃんも、喜んでんだろ?』

「それは…まぁ、喜んで観てるけど…」

二回目を観るくらいだもんな。

いつもは夢中になってるおままごとセットだって、今だけは蚊帳の外だ。

寿々花さんがこれほど、何かに夢中になるのは珍しい。

友達として、付き合ってあげたいのは山々だが…。

…人間、無理なものは無理なんだよ。

気合でどうにかなることと、そうじゃないことがある。

『それなら良いじゃん。しばらく付き合ってやれよ。お兄ちゃん』

…他人事だと思って、へらへらして言いやがって。

元はと言えば、あんたがホラー映画なんか勧めてくるから…。

…って、これも八つ当たりなんだけどな…。
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