アンハッピー・ウエディング〜前編〜
寿々花お嬢さんが、ホラー映画大好きだったという事実にも驚いたが。

更に俺は、寿々花さんの意外な一面を見て驚くことになる。

…のだが、それはもう少し先の話で。

きっかけは、ゴールデンウィーク最終日のその日…。






「…ゴールデンウィークも、今日で終わりか…」

その日の朝、朝食を食べながら。

テーブルの上に置きっぱなしの新聞を見て、俺はそう呟いた。

新聞には、ゴールデンウィーク最終日、という小見出しが書いてあった。

最終日か…。あっという間だなぁ…。

…なんか、何も出来なかったような気がするな。

長期休みのときってさ、始まる前は色々計画立てるじゃん?

休みの間はあれをやってこれをやって、時間があったらあんなこともやって…とか。

うきうきと、あれこれ予定を立てるんだけど。

実際休みが終わって振り返ってみると、予定してたことの半分も出来てないんだよな。

あれって何なんだろう?

え?俺の計画性がないだけ?

…まぁ、そう言われたら言い返す言葉がない。

どうせ俺は見切り発車で生きてますよ。

良いんだよ、別に。

元々、大した予定なんて立ててなかったし。

色々あったけど、まぁそこそこ楽しめたしな。

俺だけじゃなくて、特に寿々花さんがな。

あのお嬢様、あれからホラー映画にどハマりしたらしくて。

電子レンジを観た後も、他の怖い映画を観たがってせがんできてさ。

他の映画も色々借りてきて、このゴールデンウィーク、ホラー映画漬けだった。

付き合わされる俺は地獄だったけど、その分、おままごと遊びや絵しりとりに付き合わされることはなかった。

何だかこのゴールデンウィークで、俺のトラウマが一気に増えたような気がするけど。

寿々花さんが楽しそうだから、まぁいっか。

ゴールデンウィークが明けたら、雛堂に八つ当たりするってことで。

…すると。
 
「悠理君、おはよ〜…」

「おぉ…おはよう」

眠い目を擦りながら、寿々花さんが起きてきた。

相変わらず、俺のお古ジャージ姿で。

いい加減、その寝間着を何とかして欲しいものだが…。

本人には、全くその気は無し。

やれやれ…。

それにしても、今日は起きてくるのちょっと早かったな。

「今日は早かったんだな」

休みの日となると、昼頃まで寝てることも少なくないのに。

「うん、今日の夢はそんなに長くなかったの」

「ふーん…どんな夢?」

「捨てても捨てても帰ってくるお人形の夢だったんだー」

ホラーじゃん。

怖い映画の見過ぎだと思われる。

かく言う俺も、昨日は悪夢だった。

朝冷蔵庫を開けたら、中からゾンビが出てくる夢だった。

俺のトラウマは深い。

それなのに、寿々花さんは嬉しそうな顔で。

「青い薔薇のブローチをつけた、可愛いお人形さんだったんだよ」

「そうか…。それは良かったな…」

あんたが余裕綽々で、俺はそれが非常に悔しいよ。
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