アンハッピー・ウエディング〜前編〜
まぁ、それはそれとして。

「朝飯用意するから、ちょっと待ってな」

「ありがとー。でも悠理君が食べ終わってからで良いよ」

気遣いどうも。

でも、既に完成してるものを温めるだけだから。

あとは、トーストを焼いて用意するだけ。

「はい、こっちが寿々花お嬢さんの分」

「わーい、ありがとう。今日も美味しそうだ」

喜んでくれるのは嬉しいんだけど、サラダと目玉焼きとスープだけの、簡単な朝食だから。

これくらいで褒められたら、もっと料理上手い人に失礼だよ。

すると。

「…」

寿々花さんは、じーっとテーブルの上の朝食を見つめ。

「ねぇ、前から思ってたんだけど」

と、聞いてきた。

「ん?」

「何で朝ご飯のときはいつも、悠理君は私とおんなじもの食べないの?」

えっ。

俺は毎日、自分の分と寿々花さんの分、朝食を作ってるが。

自分の分は和食、寿々花さんの分は洋食に分けている。

これだけ聞くと、二種類も作ってるのかと驚かれそうだが。

大した手間はかかってない。寿々花さんの朝食はちゃんと作ってるけど、自分の分は結構適当だったりする。

昨日の夕飯の残りの冷やご飯を温めて、お湯注ぐだけのインスタント味噌汁、それからお弁当の残りの卵焼き。

あとは、実家から持ってきた糠床で作った漬け物を添えるだけ。

な?簡単だろ?

寿々花さんはお嬢様育ちだから、勝手な想像で、朝食は洋食の方が好きなんじゃないかと思い込み。

何だかんだ今日まで、寿々花さんの朝食は洋食を用意していたんだが…。

「…もしかして、寿々花さんも和食派だったか?」

そうだとしたら、俺、一ヶ月以上誤解して洋食を作り続けてきたことになるんだが?

「ううん。昔から、ずっと朝はパンとか、コーンフレークだったけど…」

…とのこと。

じゃ、やっぱり洋食派…?

「でも、悠理君が食べてるの見たら、何だか美味しそうな気がする」

人の食べてるものは何でも美味しく見える、あの現象な。

あるある…だけども。

「そうか…。じゃ、今度からは寿々花さんも和食にするか?」

「うん、するー」

…二種類作らなくて済むから、俺の手間は楽になったが…。

手作りの漬け物とか味噌汁とか、貧乏臭い…とは言わないのな。

まぁ、そういうこと気にする人じゃないか。

じゃ、明日からは同じ朝ご飯にするってことで。
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