アンハッピー・ウエディング〜前編〜
朝食の後。

「さーて、今日は何しよっかなー」

呑気なお嬢様である。

さては、休日を満喫してるな?

それは非常に結構なんだけど、でも一つ大事なことを忘れているんじゃないだろうか。

「なぁ、寿々花さん。水を差して悪いんだけど」

「何?こっくりさんして遊ぶ?」

危険な遊びはやめろ。

このお嬢様、ホラーに対して抵抗がなさ過ぎるぞ。

だからって、家の中を勝手に心霊スポットみたいにしないでくれ。

お化けが出る家に住むなんて、さすがに御免だからな。

「そうじゃなくて、今日何の日か分かってるか?」

「えーっと…わかめの日?」

「…そんな日があんの?」

雑学?雑学なのか?

普通の人なら、子どもの日って答えるだろうな。

「忘れてるのかもしれないけど…今日は、ゴールデンウィーク最終日なんだよ」

休み、今日で終わりなの。

休み中実家に帰省していた人も、旅行に行っていた人も、皆そろそろ帰ってくる頃。

そして明日からはまた、現実という名の普通の日常が始まるんだよ。

…残酷だよなぁ。

特に明日の朝。多分めっちゃダルいよ。

休み明けの平日の朝ほど、残酷な時間はない。

今日からまたいつもの生活か…と思うとうんざりするよな。

だから俺はそうならないように、ゴールデンウィークの最終日、つまり今日のうちに、頭をリセットし。

脳内を休日モードから、通常モードに切り替えることにしている。

どうやってやるんだ、って?

簡単だよ。

休みだからって朝寝坊はせず、早めに起き。

休日平日に限らず、毎日やっている家事を片付け。

あとは、普段学校で過ごしているときみたいに、ひたすら勉強をする。

自室のワークデスクに向かって、普段授業を受けてるときみたいに、勉強に勤しむのである。

こうやって自分を律することで、頭の中を無理矢理通常モードに切り替えるって訳。

いつまでも休み気分でいるんじゃねーぞ、ってな。

自分に鞭を打っていくスタイル。

しかしその荒療治のお陰で、俺はこれまで五月病に陥ったことはない。

荒療治だけど、効果はあるってことだな。

これはあくまでも俺の五月病対策であって、万人に通用するかは別の話。

すると、寿々花さんはしばし、じーっと俺の顔を見つめ。

「…悠理君って、夏休みの最初の一週間で全部宿題終わらせて、あとはのんびりするタイプ?」

と、聞いてきた。

よく分かったな。

「当たりだよ」

「やっぱり」

…何だよ。男の癖にみみっちい奴だと言いたいのか?

計画的だと言ってくれ。

どっちみち、やるべき宿題は全部やってるんだから良いだろ。
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