アンハッピー・ウエディング〜前編〜
とにかく、俺が言いたいことは。

「たまにはあんたも、勉強をして過ごしたらどうだ?」

「えっ」

えっ、じゃなくて。

ゴールデンウィークの間中、おままごとしてみたり、ホラー映画漬けの毎日を過ごした。

せめて最終日くらいは、遊ばずに勉強して過ごしてみたらどうだろう。

え?最終日だからこそ遊ぶんだって?

そりゃ個人の自由だけどさ。

寿々花さんは普段の休日でも、何なら平日にも、家で勉強してるところを見たことがない。

無月院家のお嬢様とはいえ、寿々花さんだっていっぱしの高校生なんだからさ。

最低限、勉強くらいはするべきだと思うんだよ。

たまにはな?

「ゴールデンウィークの間、女子部の方も宿題くらい出てるだろ?」

「?ううん。出てないよ」

「えっ」

今度は、俺が「えっ」と言う番だった。

「…出てないの?マジで?」

「うん。毎年そうだよ。ゴールデンウィークだけじゃなくて、春休みとか冬休みも。宿題はないよ」

…マジなの?

宿題をやりたくないが為に、嘘をついている…訳じゃないよな?

そこまで姑息ではないだろう。

「夏休みは長いから、さすがにちょっとくらいは宿題も出るけど…」

「…」

「他の長期休みのときは、宿題は出ないよ。…同じ学校なんだから、悠理君の方もそうじゃないの?」

「…いや…」

男子部の生徒には、ガッツリ宿題出てんだけど?

あれ?女子部の生徒は宿題、出てないのか?

これも差別?聖青薔薇学園恒例の男女差別の一環なのか?

「何で女子部の生徒は宿題、出てないんだ…?」

尊いお嬢様に、宿題なんかやらせられない…ってか?

「普段の平日もそうなのか?」

寿々花さんが、家で宿題やってるところ見たことないけど。

あれはもしかして…そもそも女子部の生徒には宿題というものが存在しないから?

宿題、課題のない学校って。それ最高じゃね?

めっちゃ羨ましいんだけど。

しかし。

「平日はちゃんと、宿題出るよ」

出るんだ。良かった。

…良かったのか?

平日に宿題出てる割には、寿々花さんが家で宿題してるところ見たことないんだが。

あんたもしかして、普段の宿題総スルーしてる?

進級出来るのか?そんなことで…。

「でも、ちょっとだけだよ。テキスト1ページ読んでくるだけとか。問題集1ページやってくるだけとか」

「…え、そんな少ないの?」

「うん」

「…」

男子部の生徒は、もっとガッツリ宿題あるんだけど?

それとも最近のエリート校は、宿題をガッツリ出さないのが主流なの?

宿題をやらせるんじゃなくて、個人の自主勉強に任せるって?

「そんな教育があるんだな…。それじゃ寿々花さんに限らず、女子部の生徒は放課後や休みの日は暇なんだな」

「…暇ってことはないと思うよ?」

「え?でも課題が出てないのに…」

「うん。でも、大抵の子は放課後に習い事があるから」

…習い事?
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