アンハッピー・ウエディング〜前編〜
この人、さては半端なく地頭が良いんだな。

今回の試験、めちゃくちゃ試験勉強頑張ってたから。

その努力が報われて、五教科満点を獲得したのだとばかり思っていた。

でも、そうじゃなかったのだ。

ろくに勉強してなくても、常に満点を取れる高いポテンシャルがある。

試験前に、「えー私全然勉強してないよー」とか言いつつ、本当に勉強してないのに、クラスで一番の成績を取っちゃうタイプ。

クラスで一番どころか…学年で、全校生徒の中で一番だけど…。

勉強しなくても頭が良いなんて、羨まし過ぎる。

こんなポテンシャルの高い寿々花さんを、「椿姫お嬢様と比べてあんたは…」と貶した奴がいるって、マジ?

頭悪いんじゃねぇの、そいつ。

「寿々花さん…あんた、頭良かったんだな…」

俺は、しみじみとそう呟いた。

俺の十倍は頭良いよ、あんた。

それなのに何故お金の計算が出来ないのか、一人で洋服も選べないのか、俺には分からないよ。

出来ることと出来ないことの差が凄まじい。

「良くないよ。だって、成績上がらなかったんだもん」

「上がってないって、そりゃそうだろ。既に一番上にいるのに、これ以上どうやって上がるんだ」

既に金メダルを取ってるんだろ。これ以上上のメダルはないよ。

現状維持したってだけで、充分成績が上がったってことになるだろう。

「ううん、下がってるんだよ。前の試験の時より…」

「前の試験って…。500点満点じゃなかったのか?」

「?」

何で首を傾げてるんだ?

「いや、だって…満点だったろ?五教科の点数」

「五教科…?」

「数学、英語、国語、理科、社会の五教科だよ」

「あぁ、うん…。それらの科目の点数は変わってないよ。前も満点だった」

さらっと言ってるけど、これめっちゃ凄いことなんじゃね?

俺なんて、五教科どころか、一教科でさえ百点満点取ったことなんてないぞ。

最後に百点を取ったのは、小学校の時の漢字テストだったな。

中学に入ってからは、一度もない。

「五教科じゃなくて…他の科目の試験が駄目だったの」

「他の科目…?副教科のことか?音楽とか美術とか…」

五教科に比べると優先度が格段に落ちるから、ついつい後回しにしてしまいがちな科目である。

「うん…。満点どころか…赤点だったの」

赤点?五教科総合一位の寿々花さんが?

新校舎の副教科の試験って、そんなに難易度高いの?

むしろ副教科は、五教科に比べて楽な試験なのだとばかり…。

でも、簡単だろうって侮ってたら、意外と見落としがちだったりする。

副教科だからって、舐めてかかったら痛い目に遭うってことだな。

だけど…ろくに勉強してなかったであろう去年の時点で、五教科満点を取っていた寿々花さんが。

うっかり赤点を取ってしまうほど、難しかったなんて。

それ、寿々花さんに限らず、クラス全員赤点なんじゃねぇの?

「そんなに難しかったのか…?何の科目?」

美術か。音楽か。保健体育か?

「…家庭科の試験…」

消え入りそうな声で、寿々花さんがそう答えた。

…家庭科?
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