アンハッピー・ウエディング〜前編〜
「で、プレゼントは何が良いと思う?」

「そうですね…。人間が人間にプレゼントして喜ぶもの…。…何か手作りのものでもプレゼントしたらどうですか?」

と、乙無。

手作り…手作りね。そう来たか。

その発想は、俺にはなかったな。

「手作りかー!星見の兄さんの手作りプレゼントをもらえるなんて、お姉ちゃんも妹ちゃんも幸せ者だなー」

「いや、まだ手作りするとは言ってない。何を作れば良いんだ?」

「そうですね…。手先が器用だったら、ハンカチやアクセサリーなんかを手作りしても良いと思いますけど」

ハンカチ…アクセサリーか。

自慢じゃないけど俺、裁縫は苦手なんだよなぁ…。

アクセサリーって、今流行りのハンドメイドアクセサリーのことか?

あれ、作れる人器用で羨ましい。

「悠理さんの得意分野で良いんじゃないでしょうか。真心を込めて作ったものなら、きっと喜んでもらえると思いますよ」

乙無にしては、真っ当なアドバイスだな。 

命日を祝えとか、奇妙なこと言ってたけど。

俺の得意分野…って何だろう。

…料理?料理だろうか。

でも、得意と言えるほど自信がある訳じゃ…。

「あ、そうだ。もし何だったら、僭越ながら僕が手作りのアクセサリーを作ってあげましょうか?」

え?

乙無から、思わぬ申し出を受けた。

「手作りのアクセサリー…?乙無、そんな特技があったのか?」

「こう見えて、手先は器用な方なんですよ」

へぇ。

確かに、少なくとも雛堂よりは器用そうだよな。

「邪神イングレア様のご加護を受けたお守りを、悠理さんのご姉妹さんに作ってあげましょう。イングレア様の邪気を身に纏うことによって、罪に満ちた世界に解放の祝福を、」

「あー、うん。気持ちだけもらっとくわ」

要らねぇよ、馬鹿。

駄目だ。結局、あんまり参考にならなかった。

…まぁ、仕方ないよな。俺達、三人共男だし。

女性に対するプレゼントなんて、気の利いたアドバイスを期待するのが間違いというものだ。

やっぱり、寿々花さんと同年代の女性に聞くのが一番…なんだろうが。

当然、そんなことを相談出来る人物に心当たりはない。

さて、どうしたものだろうか…と、思っていたが。
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