アンハッピー・ウエディング〜前編〜
「絶対避けるべきなのは、まず学級委員だな」
 
雛堂も、俺と同じ意見。

分かるよ。

クラスの人数が少ないとはいえ、クラスのリーダーになるなんて御免だよ。

俺はそんな器じゃない。

しかし、乙無は。

「そうですか?どうせどの委員になっても不平等はあるんだから、せめて一番上の役職につくのも悪くないと思いますけど」

とのこと。

成程、そういう意見もあるか…。

じゃあ、学級委員の座はあんたに譲るよ。

「あと他に、面倒臭さそうな委員は…」

「図書委員じゃね?毎週新校舎の図書室に行って、昼休みと放課後に図書室の番しなきゃならねぇんだろ?」

うわぁ、いかにも面倒臭そう。

大体、俺は放課後に時間が取れないからな。

放課後に活動がある委員は、出来るだけやりたくない。

「その点、体育祭委員と文化祭委員はアリかもな。体育祭と文化祭のときは大変そうだけど、それさえ乗り越えたらあとは暇…」

「甘い、その考えは甘いぞ、星見の兄さん」

「え?」

雛堂は真剣な眼差しで、俺をじっと見ていた。

何?その真面目な顔。

中間試験のときより真剣なんだけど。

「自分の先輩が、体育祭委員だったらしいんだけどさ…」

あぁ、この学校のOBなんだよな。

「とにかく全部、体育祭委員に丸投げらしくてさ。種目決めもプログラム作りもグラウンドの整備も、当日の父兄の接待までやらされたって」

「…!?」

「おまけに、グラウンドのテント設営も体育祭委員がやらされたって。腰バッキバキになって、翌日まともに歩けなかったって言ってた」

…マジかよ。

ブラック企業…ならぬ、ブラック委員だな。

体育祭が終わったら、あとは自由…とか思ってたけど。

いくらなんでも、こき使われ過ぎだろ。

無理。絶対無理だ。

多分、文化祭委員も同じくらい大変なんだろうな。

ってことは…他の選択肢は…。

「むしろ、少しでも楽な委員は何だよ?この…園芸委員っていうのは?」

俺は、委員決めリストの一項目を指差した。

園芸委員…中学校の時はなかったな。

園芸って言うくらいだから、花植えたり水やりしたりする係なんだろうな。

「園芸ですか。それこそ地雷なのでは?」

と、乙無が言った。

「そうか?」

「だって、この学校…旧校舎はプランターの一つもろくにありませんけど、新校舎はお花畑じゃないですか」

あっ。

何となく、察した。

「新校舎の花畑の世話を、俺達がやらされるってことか…」

「充分有り得る話でしょう?」

そうだな。

何せ、新校舎の新入生が優雅に京都旅行に行ってる間。

野郎共には、ひたすら新校舎の草むしりをやらせる学校だからな。

園芸委員とやらを選出して、新校舎のお花畑の世話をさせる…くらいのことは、いかにもやりそうじゃないか。

じゃあ、園芸委員も地雷だな…。

「…ってか、どの委員も地雷なんじゃね?」

なんか、どれを選んでも面倒臭そうな気がしてきた。

「待て、早まるな。よく見ろよ。保健委員と…広報委員ってのは、楽そうじゃね?」

と、雛堂が委員決めリストを指差した。
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