アンハッピー・ウエディング〜前編〜
翌日から、早速交代で園芸委員の仕事が始まった。

俺と小花衣委員長の活動日は、毎週水曜日に決まった。

委員会の翌日が水曜日だったので、今日から早速仕事だよ。

俺はこれから一年間、毎週水曜日の放課後に(夏の間は朝も)、庭仕事をしなきゃならなくなった訳だ。

…はぁ。自宅の庭の掃除でさえ面倒臭いって言うのに。

新校舎の花壇の世話なんて、ますますやる気出ない。

庭いじりが好きな人だったら楽しいかもしれないけど、俺は別に…ガーデニングには特に興味ないからな。

それでも、俺はまだマシなのだと思おう。

文化祭委員に決まって、魂が抜けてしまっている雛堂の、白目を剝いた顔。

あれを思い出すと、俺はまだ恵まれてる方だ。

なりたくもないのに、学級委員にさせられたクラスメイトだっているんだし。

皆不平不満はたくさんあるけど、厳正なあみだくじの結果なのだから仕方ない。

やりたくなくても、やらなきゃいけない。

乙無が一番の勝ち組だな。

しかも、俺の場合…。

「ごきげんよう」

「…どうも…」

園芸委員、委員長である小花衣先輩とペアを組んでいる以上。

責任を放棄してサボり…も許されない。

これから一年間、このふわふわお花畑お嬢様と一緒に、園芸委員の仕事をしなきゃならない。

…ごきげんようって挨拶されたら、何て返せば良いんだ?

俺もごきげんようって言うべきなのか?

お嬢様が言うと様になってるけど、俺みたいな凡人が言うと、ただただ滑稽なだけ。

「今日から一緒に、お花の世話を頑張りましょうね」

にこっ、と微笑む小花衣先輩。

「は、はい…」

「宜しくお願いしますね、えぇと…。お名前は何ておっしゃったかしら」

旧校舎一年の下っ端の名前なんて、いちいち覚えなくて良いですよ。

でも、聞かれてしまったら、答えない訳にはいかない。

「男子部一年の…星見悠理です」

「そう、悠理さんっておっしゃるのね」

抵抗なく下の名前で呼んでくるな。

「まだ一年生なんですね。道理で、見慣れないお顔だと思いました」

そもそも俺、男子部の生徒なんでね。

女子部とは校舎が違うんだから、お互い見慣れないのは当たり前だよ。

「それじゃ、悠理さん。活動を始めましょうか」

「は、はい…」

「まずは中庭から始めましょう」

にこにこと、微笑みを絶やさない小花衣先輩。

なんつーか、悪い人じゃないんだろうけど。

…やりにくいなぁ…。
 
同じお嬢様なのに、うちの寿々花さんとは全然違うよな。

むしろ、小花衣先輩の方が本物のお嬢様、って感じがする。

新校舎に通ってるってことは、実際お嬢様なんだろうけど。
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