アンハッピー・ウエディング〜前編〜
俺がたくさん悩んで考えた結果なら、何でも喜んでくれるはず…か。

ありきたりな言葉だけど、実際そうなんだろうな。

俺、あれこれ姑息なこと考え過ぎてたのかもな。

寿々花さんに喜んでもらいたいなら、それほど難しく考える必要はないのかも。

俺には、寿々花さんくらいの歳の女の子が、どんなものを欲しがってるのか分からないし。

生まれてこの方、まともに誕生日を祝ってもらったことのない寿々花さんが。

初めての誕生日祝いで、何を求めているのかも分からない。

寿々花さんの思う「誕生日プレゼント」のイメージと、俺の思うそれとは、大きな相違がありそうな気がする。

よって。

下手に俺の判断でプレゼントを選んで、寿々花さんを失望させるより。

寿々花さんに、どんなものが欲しいか…せめて、どういうものが欲しいのか、聞いてみようと思った。

装飾品が良いのかとか、食べ物が良いのかとか。

それこそ、小花衣先輩が言ってた…花束とかさ。

選択肢をいくつかに絞ってくれたら、俺も選びやすいというものだ。

そこで。

「なぁ、寿々花さん。誕生日プレゼントのことなんだけど」

「うん。なーに?」

「何か欲しいものはあるか?」

回りくどい質問はなし。

ストレートど直球で、聞きたいことを聞いた。

すると。

「うーん、そうだな…」

しばし考えて、結局出てきたのは。

「シャボン玉かな」

「…」

…予想の斜め上。
 
いや、むしろ予想の斜め下の回答が飛び出してきた。

な?だから本人に聞いて正解だったんだよ。

何が欲しいか尋ねて、シャボン玉だと答える女子高生が、寿々花さんを除いて存在するか?

俺の自己判断で選ばなくて、本当に良かった。

「シャボン玉…っていうのは、何かの比喩か…?」

そんな名前のブランド品があるとか?そういうことじゃないよな?

俺の思ってる、あのシャボン玉だよな?

「…?シャボン玉だよ。悠理君、シャボン玉知らないの?ふーってやったらふわふわの泡が出るの」

知ってるよ。

やっぱり、俺の思ってるあのシャボン玉のことだな?

…今日日、幼稚園児でもシャボン玉では遊ばないのでは?

つーか、スーパーで百円じゃん。

安っ…。あんたはそれで満足なのかよ。

「何でシャボン玉…?」

「やったことないから、やってみたいの。ふわふわして面白いのかなぁって」

「あ、そう…」

小さい子ならまだしも、高校生にもなってシャボン玉…は、つまらないと思うんだけど。

憧れいっぱい、期待いっぱいの表情でこちらを見るものだから。

シャボン玉はやめとけよ、とはとても言えなかった。
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