アンハッピー・ウエディング〜前編〜
「…それで、悠理さん。結局誕生日プレゼントは決めたんですか?」

と、乙無が聞いてきた。

「もうすぐ誕生日当日なんでしょう?」

「あぁ、明日だよ」

準備は、ほぼ終わっている。

プレゼントも用意したし、誕生日のご馳走メニューを作る準備もした。

「あとは、明日の放課後にケーキを買って帰るだけだ」

「本当に良い奴だなぁ、星見の兄さん。姉妹と仲が良くて羨ましいぜ」

仲が良いって言うか…。

中間試験で一番を取ったご褒美を兼ねてるから。

「放課後に、ケーキですか…」

乙無がポツリと呟いた。

…何か問題が?

「何だよ?」

「あ、いえ…。つかぬことを聞きますけど、ケーキは予約してあるんですか?」

「え?いや…特にしてないけど」

大抵どのケーキ屋に行っても、デコレーションケーキくらいは売ってるだろ?

春に寿々花さんと一緒に行ったケーキ屋。あそこに買いに行こうと思ってたんだけど。

ほら、現金払いしか出来ないお店。

寿々花さんがお金の計算出来なくて、めっちゃ迷惑をかけた、あの店だよ。

「放課後に買いに行くんじゃ、ケーキ残ってますかね?」

「…!売り切れるもんなのか?」

「そりゃ、お店によるとしか…。でも、人気のお店だったら売り切れてるかもしれませんね」

「…」

それは盲点だった。

デコレーションケーキなんて何処にでも売ってる、とたかを括っていたんだが…。

売り切れたらヤバいよな?

でも、今から予約しようにも…。さすがに、今から明日の予約は無理な気がする。

せめて3日前に気づくべきだった。

「ケーキ…。売ってたら良いんだが」

「大丈夫だって、星見の兄さん。あんた器用なんだし。いざとなったら自分で作ったら良いじゃん」

ケーキを?嘘だろ。

あんた、他人事だと思って適当言いやがって。

ケーキって、作るの大変なんだぞ。作ったことないけど。

いかにも大変そうじゃないか?生クリーム泡立てたりさ…。

「しっかし、乙無の兄さんが、星見の兄さんの姉さんにプレゼントを作ってくるとは…。これ、あれかな?自分も何かプレゼント、用意した方が良い?」

「え?別に、そんな気を遣わなくて良いよ」

大体雛堂も乙無も、俺の姉妹…じゃなくて、寿々花さんの面識ないだろ。

精々、遠目から眺めていただけ。

そもそも姉妹じゃないから。

「でもさぁ、美人の姉さんなんだろ?」

「…まぁ、見た目だけはな」

「なら、ちょっとでもお近づきになりたいじゃん!よし、明日なんか持ってくるよ」

「…」

お近づきになりたいなら、新校舎を訪ねてみたらどうだ?

「今度紹介してくれよ。な?聖青薔薇学園の雛堂っていう生徒が姉さんに会いたがってるって、伝えておいてくれ」

「あ、そ…」

わざわざ紹介しなくても、寿々花さんも同じ学校だよ。
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