アンハッピー・ウエディング〜前編〜
「…!シャボン玉だ。シャボン玉…ずっとやってみたかったの」

「そうか」

「早速遊ぼーっと」

「おい、待て。今日はもうやめとけって」

つーか、室内で遊ぼうとするな。

シャボン玉は屋外でやるもんだろうが。

「それに、まだプレゼントがあるんだよ。先に全部受け取ってくれ」

「…まだ?もうこんなにあるのに、他にもあるの?」

「安物だからな…。シャボン玉」

普通のは百円だったし、電動のシャボン玉玩具だって、精々2000円くらいだった。

女子高生の誕生日プレゼントにしては、予算が安過ぎるなと思って。

ついでに、俺から…自分で選んで、買ってきたよ。

本人のリクエストを聞いて選んだものじゃないから、喜んでもらえるかは分からないけど。

まぁ、要らなかったとしても、何かの役には立つと思うから。

適当に使ってくれ。

「…要らなくても、あんまり露骨にがっかりしないでくれよ?」

「がっかりなんてしないよ」

「それなら良いんだけど…。…はい、これ」

俺は、薄いピンク色の包装紙に包まれたプレゼントを手渡した。

…何だか気恥ずかしいな。

母親以外の女性にプレゼントを渡すなんて、思えばこれが初めてだな。

「わーい、ありがとう悠理君…。…開けても良い?」

「どうぞ」

…目の前でプレゼント開けられるの、ちょっと緊張するよな。

自分のセンスを試されてるような気がして。

「ふわふわだ。悠理君、これなぁに?」

「えっと…。ブランケットなんだけど…」

「ぶらんけ?」

「膝掛け…。毛布みたいなもんだよ」

これでも、色々考えたんだからな。

やっぱり実用的なものの方が良いのかなと思って、寿々花さんが必要としそうなものを一生懸命考え。

そういや、寿々花さんはよく昼寝をするし、よく夢の話をするし…寝るのが大好きみたいだから。

それじゃあ、昼寝用のブランケットとかどうかなと思って。

寿々花さんの好きな緑色のブランケット、探して買ってきたんだ。

「昼寝するときとか…使うかなと思ったんだけど」

「…」

「…えっと、要らなかったか?」

ぶんぶん、と寿々花さんは首を横に振った。

それどころか、もらったばかりのブランケットを、ぎゅっと抱き締めていた。

…えーっと。

…気に入ってもらえたってことで良いんだよな?

「いっぱい誕生日プレゼントもらって、今日は大変な日だ…」

と、寿々花さんはポツリと呟いていた。

良かったな。

実は、もっとあるんだよ。

「それから、その…。こっちは…俺のクラスメイトからなんだけど」

「…悠理君のクラスメイト?」

寿々花さんにとっては、顔も名前も知らない相手だもんな。

何でそんな奴らが、自分に誕生日プレゼントを…?と思ってるんだろう。

「寿々花さんへの誕生日プレゼントについて、相談に乗ってもらったことがあって。それでその…。寿々花さんが今日誕生日だって知って、便乗してプレゼントを用意してくれたって言うか」

「…便乗…」

「…まぁ、何だ。気にせずもらってくれ」

俺は、寿々花さんに雛堂と乙無からのプレゼントを渡した。
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