アンハッピー・ウエディング〜前編〜
まず先に開けたのは、乙無のプレゼントから。

「何だろう、これ。あ、…指輪だ」

黒っぽい小さな石がついた、洒落たデザインの指輪だった。

へぇ、お洒落。

乙無って、意外とセンス良いのかもな。

少なくとも、俺よりはセンスがあると思う。

中二病だけど。

「凄いね、綺麗だね」

嬉しそうな寿々花さんである。

人並みに、装飾品もらって喜ぶのな。

と言うか、何でも良いからプレゼントもらったら嬉しいのかも。

「しかも、それ手作りなんだってさ」

「手作り?指輪を手作り出来るの?」

「らしいよ」

所謂、ハンドメイドアクセサリーって奴だな。

器用で羨ましいよ。

「なんか…えーと、邪神の加護?とやらを受けた、霊験あらたか…?な指輪なんだって」

「…??じゃしん…?」

首を傾げて当然である。

いつも乙無の中二病発現を聞いている俺だって、よく分かってない。

「俺もよく分からないけど、とりあえず大事にしてやってくれ」

「うん、分かったー」

寿々花さんが喜んでたって、乙無に伝えておくよ。

…で、次に開けたのは、雛堂からのプレゼント。

「こっちはなぁに?」

「あんたの好きなものだよ」

さっきまで見てたDVD。あれだよ。

紙袋の中から、出るわ出るわ、中古の映画のDVD。

すげー種類ある。

これ、全部観ようと思ったら何時間かかるんだ?

全部見終わる頃には、呪いにかかってる気がする。

「わー。これ、全部映画のDVDなの?」

「らしいよ。しかも、全部怖い映画なんだってさ…」

「凄い。いっぱいあるよ。一緒にお家で映画館出来るね。一緒に観ようね、悠理君」

「…」

俺は遠慮しておくよ、と言いたいところだったが。

寿々花さんが嬉しそうだったから、水を差すようなことは言えなかった。

「誕生日プレゼント、こんなにいっぱいもらったの初めてだ」

ほくほくと、もらったばかりのプレゼントを抱き締めていた。

…こんなに嬉しそうな寿々花お嬢さんを見るのも、初めてかもな。

「こんな盛大に誕生日のお祝いしてもらったのも、初めてなんだよ」

「盛大か?これ…」

祝ってやるって約束した割には、地味と言うか…アットホームな誕生日パーティーで。

こちらとしては、少々申し訳ないのだが。

特に、誕生日ケーキな。

もっとマシなケーキを用意してあげたかったよ。

「凄く盛大だよ。いっぱい美味しいもの食べて、いっぱいプレゼントもらって…」

「…」

「試験勉強、たくさん頑張って良かった」

…そういや、この為に試験勉強、頑張ったんだっけな。

「…あのなぁ、寿々花さん」

「なぁに?」

この際だから、はっきり言わせてもらうぞ。

「何だか誤解しているようだが。俺は別に、あんたが試験勉強頑張ったから、そのご褒美のつもりで誕生日祝いをしたんじゃないからな」

「…?」

…きょとんとするなよ。

まぁ、今回は試験勉強のご褒美も兼ねていたけど。

試験で赤点だったとしても、今日のお祝いは変わらなかっただろう。
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