アンハッピー・ウエディング〜前編〜
「誕生日くらい、試験勉強を頑張らなくても、いくらでも祝ってやるよ。来年からも、毎年ずっとな」

「…本当?良いの?」

「良いに決まってるだろ?誕生日祝いは、誰もが当たり前に持ってる権利だ」

こう言っちゃ悪いけどな、これまでの寿々花さんの価値観がおかしかったんだよ。

つーか、悪いのは寿々花さんの周りにいた人間だな。

お姉さんばっかり贔屓して、寿々花さんを蔑ろにし続けた大人が悪い。

「じゃあ、来年もお祝いしてくれる?」

「勿論」

来年は18歳だっけ?

それはもう、盛大にお祝いしないとな。

そのときは、ちゃんとケーキも用意しておくよ。

「分かったか?」

「うん。楽しみにしてる」

「よし」

それで良い。

祝ってもらって当たり前なんだからな。自分がこの世に生まれた日を。

「誕生日って、こんなに嬉しい日だったんだね。知らなかった」

そうか。

余程嬉しかったのか、寿々花さんは。

「早く来年の誕生日にならないかなー」

…なんて、呟いていた。

気が早い。あと365日だぞ。

…まぁ、楽しんでもらえたなら良かった。

準備を頑張った甲斐があるってもんだよ。
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