アンハッピー・ウエディング〜前編〜
しばらく、寿々花さんと共にガイドブックを眺めて。

色々分かったことがある。

まず、チケットの話。

椿姫お嬢さんが送ってくれた、優待チケット。

ハムスターランドって、色んな種類の入場券があるらしい。

俺はてっきり、入園料が無料になるか、半額くらいに安くなるチケットなのだろうと思っていたが。

どうやら、俺の手元にあるこのチケット、かなり高性能であるらしい。

このチケット一枚で、ハムスターランド、及び隣接するハムスタースカイに無料で入園出来る。

一日目はハムスターランド、二日目はハムスタースカイ、みたいな。

そして、無料になるのは入園料だけではない。

この一枚で、ハムスターリゾート内にあるセレブレーションホテル。

その名も、ハムスターランドホテルに宿泊出来るらしい。

入園料もただ、付属のランドホテルの宿泊料もただ…。

おまけに、パーク内でアトラクションやレストランの行列を待たず、常に順番を優先してくれる特別パス付き、だそうだ。

つまり、他のお客さんみたいに、行列に並ぶ必要がないんだよ。

アトラクションだろうとレストランだろうと、印籠のようにこのチケットを突きつけて。

「これが目に入らぬか!」と言うだけで、優先的な待遇を受けられるらしい。

…優れもの過ぎないか?このチケット。

しかも、それを二枚…。ペアチケットだから、二人分。

こんな話をすると生々しいけど、多分相当のお値段がしたはずだ。

椿姫お嬢さんも、無月院家のお嬢様だからな…。金には困ってないってことなんだろう。

妹の誕生日の為に、随分奮発してくれたんだろうな。

これで楽しんでおいで、って。

こりゃもう、椿姫お嬢さんの期待に応えて。

思う存分、童心に返って思いっきり楽しまないと損だな。

で、チケット以外にも分かったことが色々。

アトラクションの種類とか、レストランの場所、そのレストランのメニュー。

グッズを売っているお店もたくさんあって、しかもお店毎に売ってるグッズが異なるらしい。

このグッズはこのお土産屋さんにしか売ってません、みたいな。

商売上手いなぁ、ハムスターの癖に…。

アトラクションの種類も様々で、どれも興味をそそられる。

「寿々花さんは…何に乗りたいんだ?」

実際のアトラクションは、本で眺めているのとは印象が違うかもしれないけど。

さっきからメリーゴーランドとかどうのとか、コーヒーカップがどうのとか言ってるから。

多分寿々花さんは、この「お子様連れにおすすめ」マークのついたアトラクションを選ぶんだろうな。

…と、思っていたが。

「これが良い。ビッグハムスター・マウンテン」

ハムスターがトロッコに乗って、山の中を超スピードで駆け回るアトラクションである。

ゴリッゴリの絶叫系。

そうか、ジェットコースター乗りたいのか…。

そういや寿々花さん、そういうところあったな…。

いかにもほんわかして、お子様っぽいと思っていたら…その無邪気な顔で、ホラー映画に夢中になるんだもんな。

あんたはそういう人だよ。
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