アンハッピー・ウエディング〜前編〜
まぁ、寿々花お嬢さんがどんなアトラクションに乗ろうと。

俺には関係のないことだから、好きにしてくれれば良い。

本人が楽しむのが一番だよ。

「あとね、これも乗りたい。スペースハムスター・マウンテン」

また絶叫系。

「それから、ハムラッシュ・マウンテンも。この三つが、ハムスターランドの三大マウンテンなんだって」

マウンテンの名を冠するジェットコースター、3種類全部制覇したいらしい。

人気のアトラクションだから、きっと普通に乗るには長時間待たないといけないんだろうが。

そこは、この特別優待チケットの出番だよ。

折角の、金の力で得た特権だからな。

存分に活用していけ。

「あと、このハムーテッド・マンションっていうアトラクションも乗りたいんだー」

「…そんなのあったっけ?それもジェットコースター?」

「ううん。ハムスターのおばけが出てくるマンションなんだって」

「…」

「ハムスターのおばけが、パーティーを開いてるんだって。私達はそこに入っていって、一緒にハムスターのおばけになるんだよ」

…なりたいのか?ハムスターのおばけ。

やけにはしゃいでるようだけど。

せめておばけになるなら、人間のおばけが良かったな…。

ジェットコースターではないけど、これも別の意味で絶叫系かもな…。

寿々花さんのホラー映画好きが、ここに来て発揮されていく。

「アトラクションも良いけど…。グッズを買ったり、レストランで休んだりする予定も入れておけよ」

一日中、飲まず食わずでアトラクションを乗り回すつもりか?

そういう楽しみ方もあるとは思うが。

初めてのハムスターランドなんだから、広く浅く、満遍なく楽しんだ方が良いんじゃないか?

「レストランかー…」

…ピンと来ないか?

「ほら、ここに載ってるぞ。ハムスターランドおすすめのグルメだって」

実に様々な種類があるぞ。

ハムスターの顔の形をしたワッフル、チュロス、アイスクリームなどのスイーツの他。

パイナップルのピザ、なんてものもあるらしいぞ。

…美味いのか?ピザにパイナップル…。

酢豚にパイナップル、ならまだ分かるけど…。

逆に、どんな味なのか試してみたくなるな。

まぁ、俺には関係のない話だ。

軽食系の他にも、ちゃんと腰を下ろして食事が出来るレストランもある。

お洒落なコース料理のサンプル写真が、ガイドブックに載ってるよ。

本格的なフレンチだな…。いかにもお高そう。

寿々花さんも寿々花さんの同級生も、根っからのお嬢様育ち。

軽食の類よりも、こういうフレンチのコース料理の方が馴染みがあるんじゃないか?

俺は、高級フレンチの味なんか分からないからさ。

こっちのホットドッグとか、ハンバーガーで腹を満たす方が性に合ってるけど。

「そっか…。でも、ご飯はあんまり興味ないかな…」

「え、何で?」

こんなにお洒落なメニューがたくさんあるのに、興味をそそられないのか。

「だって、悠理君のご飯が一番美味しいもん」

「…」

「悠理君のご飯より美味しいものは、他にはないでしょ?だから、あんまりレストランには興味ないかな」

「…俺の料理と、ハムスターランドのレストランを同列に語るなよ…」

そんな生意気言ってたら、ハムスターのバチが当たるわ。
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