アンハッピー・ウエディング〜前編〜
およそ二時間後。

やり切った。乗り切ったぞ俺は。

自分がマネキンになったと思い込んで、右に左と振り回された。

何なら逆さまになって一回転もした。

しかし、やり切った。今ばかりは自分を褒めたい。

何だかげっそりと疲れたような気がするけど、多分気の所為だな。

ついでに、この二日間で寿命が十年くらい縮まったような気もする。が、これも多分気の所為。

何でも気の所為ってことにしておこう。

「こ、これで…乗りたいものは全部乗ったか?」

「うん。楽しかったー」

良かった。

寿々花さんが満足なら、それで良いんだよ。

寿々花さんが満足ならな。

「それで…この後はどうする?」

「そうだなー…。このキラキラの飲み物飲んでみたい」

と言って、寿々花さんはガイドブックのハムスタースカイおすすめグルメの1ページを指差した。

このガイドブック、大活躍だな。

キラキラの飲み物とは、ノンアルコールのスパークリングカクテルのことである。

鮮やかな青いドリンクや、爽やかな緑色のドリンク等々。色んな種類があるらしい。

キラキラしたもの好きだな、寿々花さん。カラスか?

「分かった。良いよ。…良いんだけど…」

「…けど?」

「…ちょっと疲れたから、少し休んでからで良いか?」

丁度そこに、木陰に空いているベンチがある。

ちょっと腰を下ろして休みたい。

心頭滅却したけど、やっぱり疲れるもんは疲れるわ。

「うん、良いよー」

…ごめんな。

俺、男なのに…。女である寿々花さんより体力がないって、本当情けない。

やれやれ。

「そうだ。悠理君、ここに座って待ってて。私、その間に飲み物買ってくる」

…とのこと。

「良いけど…店の場所、分かるのか?」

「すぐそこだよ。さっき見たから、分かる」

「あ、そう…」

じゃあ、大丈夫か…ついてなくても。

…思えばこのとき俺は、疲れ過ぎて、判断を誤ってしまったのかもしれない。

「行ってくるね〜」

寿々花さんはひらひらと手を振って、人混みの中に消えていった。

寿々花さんがドリンクを買って戻ってくるまで、ちょっと一休みするかな…と。

…くつろいだ気分でいられたのは、それから10分程度のことだった。
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