アンハッピー・ウエディング〜前編〜
寿々花さんの…婚約者。
円城寺雷人が、寿々花さんの最初の婚約者だった。
それは…勿論、無月院本家の当主が決めたこと、なんだよな?
でも…じゃあ、何で…。
…さっき寿々花さんに向かって、「僕に捨てられてから…」とか言ってたよな?
「元ってことは、今は違うんだな?」
「当然だよ。今の婚約者は君なんだろう?僕に捨てられて、他に誰も貰い手がいなかったから、君みたいな消えかかった分家の人間を押し付けたんだろう」
消えかかってて悪かったな。
「分家の下っ端を押し付けておけば、断られることもないだろうからね。そうでもしないと、永遠に結婚なんか出来やしないだろうよ。寿々花様は」
「…喧嘩売ってんのか?」
「だって事実だろう?『あの』無月院椿姫様の妹だというから、さぞかし立派な娘だろうと思っていたのに…」
円城寺は、今度は寿々花さんに向かって、小馬鹿にしたような視線を向けた。
「蓋を開けてみれば、これだよ。椿姫様とは比べ物にならない、劣った妹…」
「…」
「女の癖に、料理も裁縫も、花や楽器の趣味もない。顔だけはまぁまぁ良いけど、それだけだよ。こんな品のない女と結婚するなんて冗談じゃない。そう思って、こちらから婚約破棄してやったんだ」
「…」
…ふーん。
とりあえずあんたは、俺に思いっきりお玉で殴られる前に、この家から出ていった方が良いと思うぞ。
「今だって、こんな小汚い家に住んで、嬉々として豚の餌のようなものを食べているとは。君には、無月院家の人間としての誇りはないのか?」
「…餌じゃないよ。悠理君のご飯はいつも美味しいもん」
寿々花さんは、ポツリと小さな声で抗弁した。
食って掛かるのはそこなのか。
「美味しい?これが?」
軽蔑しきった顔で、円城寺は食卓の上を見下ろした。
悪かったな。
「…何なんだよ?この食べ物は」
「ハンバーグだよ。悠理君が作ってくれたの」
「こっちの雑草みたいなのは?」
「大根の葉っぱの糠漬けだって」
「大根の葉…!?生ゴミじゃないか。そんなものを食べさせられてるのか?」
こいつ、大根の葉っぱを生ゴミ呼ばわりしやがった。
可哀想に。この人、大根の葉っぱの漬け物を添えたお茶漬けがどれほど美味しいものか、知らないんだな。
それで人生楽しいんだろうか?
「僕に見捨てられて、少しは態度を改めかと思ったけど…。むしろ、分家の婚約者のせいで余計に悪くなったようだね」
「…」
「全く、これだから…。…優秀な姉上に申し訳ないとは思わないのか?」
「…」
俺の手料理を馬鹿にされたら言い返すのに。
寿々花さんは、自分を散々扱き下ろされても、何も言い返さなかった。
「君の態度次第では、また婚約し直しても良いとも思っていたけど。それは無理そうだね」
どんだけ上から目線だよ?
自分がどれほど偉いと思ってんだ。イギリス帰りのお坊ちゃまがよ。
「これ以上、本家と姉上の名前に泥を塗る前に、態度を改めるんだね」
「…そんな嫌味言いに来たのかよ?」
これ以上、黙って聞いていることは出来なかった。
何で寿々花さんがここまで言われなきゃならないんだ。
円城寺雷人が、寿々花さんの最初の婚約者だった。
それは…勿論、無月院本家の当主が決めたこと、なんだよな?
でも…じゃあ、何で…。
…さっき寿々花さんに向かって、「僕に捨てられてから…」とか言ってたよな?
「元ってことは、今は違うんだな?」
「当然だよ。今の婚約者は君なんだろう?僕に捨てられて、他に誰も貰い手がいなかったから、君みたいな消えかかった分家の人間を押し付けたんだろう」
消えかかってて悪かったな。
「分家の下っ端を押し付けておけば、断られることもないだろうからね。そうでもしないと、永遠に結婚なんか出来やしないだろうよ。寿々花様は」
「…喧嘩売ってんのか?」
「だって事実だろう?『あの』無月院椿姫様の妹だというから、さぞかし立派な娘だろうと思っていたのに…」
円城寺は、今度は寿々花さんに向かって、小馬鹿にしたような視線を向けた。
「蓋を開けてみれば、これだよ。椿姫様とは比べ物にならない、劣った妹…」
「…」
「女の癖に、料理も裁縫も、花や楽器の趣味もない。顔だけはまぁまぁ良いけど、それだけだよ。こんな品のない女と結婚するなんて冗談じゃない。そう思って、こちらから婚約破棄してやったんだ」
「…」
…ふーん。
とりあえずあんたは、俺に思いっきりお玉で殴られる前に、この家から出ていった方が良いと思うぞ。
「今だって、こんな小汚い家に住んで、嬉々として豚の餌のようなものを食べているとは。君には、無月院家の人間としての誇りはないのか?」
「…餌じゃないよ。悠理君のご飯はいつも美味しいもん」
寿々花さんは、ポツリと小さな声で抗弁した。
食って掛かるのはそこなのか。
「美味しい?これが?」
軽蔑しきった顔で、円城寺は食卓の上を見下ろした。
悪かったな。
「…何なんだよ?この食べ物は」
「ハンバーグだよ。悠理君が作ってくれたの」
「こっちの雑草みたいなのは?」
「大根の葉っぱの糠漬けだって」
「大根の葉…!?生ゴミじゃないか。そんなものを食べさせられてるのか?」
こいつ、大根の葉っぱを生ゴミ呼ばわりしやがった。
可哀想に。この人、大根の葉っぱの漬け物を添えたお茶漬けがどれほど美味しいものか、知らないんだな。
それで人生楽しいんだろうか?
「僕に見捨てられて、少しは態度を改めかと思ったけど…。むしろ、分家の婚約者のせいで余計に悪くなったようだね」
「…」
「全く、これだから…。…優秀な姉上に申し訳ないとは思わないのか?」
「…」
俺の手料理を馬鹿にされたら言い返すのに。
寿々花さんは、自分を散々扱き下ろされても、何も言い返さなかった。
「君の態度次第では、また婚約し直しても良いとも思っていたけど。それは無理そうだね」
どんだけ上から目線だよ?
自分がどれほど偉いと思ってんだ。イギリス帰りのお坊ちゃまがよ。
「これ以上、本家と姉上の名前に泥を塗る前に、態度を改めるんだね」
「…そんな嫌味言いに来たのかよ?」
これ以上、黙って聞いていることは出来なかった。
何で寿々花さんがここまで言われなきゃならないんだ。