アンハッピー・ウエディング〜前編〜
…ちなみに。

「お土産って何なんだろうな…?これ…」

一方的に置いていきやがったけど。

なんかムカつくから、そのままゴミ箱に捨ててやろうか。

でも、お土産そのものに罪はないからな。

円城寺は最高にムカつくが、イギリス土産は何も悪くない。

まさか毒が入ってる訳じゃないだろうし。

中身は何かなと思って開けてみたら、イギリス名物のお高そうな紅茶の茶葉。

と、こちらもイギリス名物のお茶菓子だった。

ふーん。

クソ生意気だけど、お土産のセンスはそこそこだな。

「寿々花さん、これってやっぱりお高いのか?」

「うん。イギリスでも有名な高級紅茶専門店の紅茶だね」

とのこと。

へぇ。紅茶なんて俺、20パック入り300円のティーバックのものしか知らないや。

円城寺のことはムカつくけども、このお高い紅茶を飲んで気持ちを落ち着けるとするかな。

…しかしあいつ、帰り際に「また来る」とか言ってやがったよな?

寿々花さんのことを散々馬鹿にしていた癖に、未練はタラタラって訳か。

…口ではああ言いながらも、諦めきれないのかもな。無月院本家の次女との婚姻を。

もう二度と来なくて良いんだけど。

俺はムカつくだけだから別に良いとして、寿々花さんが可哀想だよな。

あんな奴に、自尊心ズタズタにされてさ…。

「悠理君、おやつ食べても良い?」

普段通り振る舞っているものの、内心ではどう思っているのやら。

「良いよ。アイスも食べて良い」

「わーい。やったー」

アイスくらいで、寿々花さんの傷ついた心が慰められるとは思わないけど。

俺は、おやつを頬張る寿々花さんの頭に手を伸ばし。

おもむろに、くしゃくしゃと髪の毛を撫でてやった。

「わわわ。どうしたの悠理君」

「何でもない」

…誰が何と言おうと。

あんたはそのままで良いんだからな。特別な何かになろうとしなくても。
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