アンハッピー・ウエディング〜前編〜
…と、思っていたら。

その日のホームルームで、遠足の行き先が決まったことを担任の先生から伝えられた。

その行き先というのは。

「…何で動物園なんだ?」

これには、遠足に期待していた雛堂も困惑。

そう来たかー…って感じだよな。

山登りや、近場の公園でピクニック…とかじゃなくて、それは安心したけど。

でも、何でそうなったんだろうと思わざるを得ない。

「うちのチビがさぁ、下のが幼稚園児なんだけど。やっぱり、先週遠足でさ」

と、語り出す雛堂。

「うん」

「行き先、動物園だったわ。キリンがデカかったー、ってすげー喜んでた」

…そうか。

動物園…と言えば、小さい子供が行きたがる場所の定番だよな。

俺もあったよ。小さい頃。そんな時期が。

「お休みの日に動物園行きたい」とか、言ってたよ。

幼稚園児の頃だけどな。

「…自分ら、高一だぜ?高校生だぜ?16歳の」

「俺はまだ15だけどな…」

「僕は4桁越えてますけどね。年齢」

さすがは邪神の眷属。何年生きてんだ?

年齢4桁越えてる奴が、何で高校生やってるんだよ。

乙無の中二病にはついていけん。

「動物園なんておめー、ちびっ子の行くところだろうがよ!良い歳した野郎共が、何が楽しくてゾウさんやキリンさんに会いに行かなきゃいけないんだよ…!?」

「そんなこと俺に聞かれても…。知らねーよ…」

学校側が決めたことなんだから、預かり知る余地はない。

公園や山登りじゃなかったんだから、まだマシだったと思おう。

「つまんねー!動物園とか超つまんねー」

そう言うなよ。

全国の、動物園巡りが趣味の人に怒られるぞ。

よっぽど動物が好きだったら、動物園に遠足なんて大喜びなんだろうけど。

如何せん、俺はそんなに動物が好きな訳じゃないし…。

動物園なんて、小学校低学年で卒業してるからさ。

全然行きたいと思えねぇ。

…寿々花さんだったら喜んでたかもなぁ。

女子部の二年生は、何処に行くんだろうな?

「畜生、こうなったら昼飯…お弁当で挽回するしかねぇ」

と、雛堂。

「そんな訳で星見の兄さん、頼んだ」

雛堂は、俺の両肩にポンと手を置いた。

…は?

「…頼んだって、何を?」

「昼の弁当。自分の分も作って」

すげー真面目な顔して頼まれて、反応に困ってしまった。
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