アンハッピー・ウエディング〜前編〜
「やったー。悠理君のお弁当。楽しみだな」

ホラー映画の化け物のキャラ弁を楽しみにする女子高生は、寿々花さんくらいのものだろうよ。

やれやれ。どうやって作ったものかな…と、考えていると。

「あ、そうだ。じゃあ、注文してたランチ、私の分は要らないって先生に言っておかなきゃ」

寿々花さんがポツリと呟いた。

…うん?

注文してたランチ…?

…そういや、まだ聞いてなかったけど。

「…寿々花さんのクラスは、遠足、何処に行くんだ?」

「え?つまらないところだよ」

つまらないところ?

って、何処だよ?近くの工場やオフィスビルで社会見学とか?

それは確かにつまらなさそうだが…。

でも、今ランチって言ってたよな。

「海だよ」

「…海?」

「うん。船に乗るの。えーと…ほら、これパンフレット」

寿々花さんは、遠足のしおりめいたパンフレットを手渡してきた。

どれどれ、と軽い気持ちで手に取ったのが間違いだった。

それは、豪華客船『ブルーローズ・ドリーム号』とやらいう、クルーズ船のパンフレット。

思わず、目が点になった。

「その船に乗るんだってー」

「まっ…!」

…マジで?

それ、本当に学校の遠足か?

軽く日帰り旅行じゃん。

「な…。…何すんの?船で…」

「?色々。パンフレットに書いてあるでしょ?景色を眺めたり、プールとか、ミュージカル観たりとか…」

本当だ。書いてある。

「最新の豪華客船で、思い思いのアクティビティをお楽しみください」って。

デッキから、大海原の景色を眺めるも良し。

プールや温泉に入るも良し。

マッサージやエステを受けるも良し。

専用の劇場で、映画、ミュージカル、ショー、オペラなどを鑑賞するも良し。

エクササイズマシンを備えたフィットネスルームで、身体を動かすも良し。

船内の免税ショップで、ショッピングを楽しむも良し。

ランチは、10種類近くもあるレストランの中から好きなところを選べる上に。

午後は船内のカフェで、優雅にアフタヌーンティーを楽しむそうだ。

へー。凄いっすね。

これさぁ、もう学校の遠足じゃなくね?

超豪華日帰りクルーズ旅行だよ。
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