アンハッピー・ウエディング〜前編〜
お互い、出来上がったお弁当を荷物の中に入れ。

いざ、出発。

寿々花さんは豪華客船『ブルーローズ・ドリーム号』に。

そして、俺は…。





「…なぁ、どう思う?」

「…何がだよ」

「遠足だぜ?高校生の。幼稚園児や小学校低学年じゃないんだぜ?自分ら」

知ってるよ。

そんな真顔で言わなくても。

「チビ共の遠足ならまだ分かるよ?まだ分かるけども。でも、何でさ」

「…」

「何で、徒歩で遠足に行かなきゃならんのだよ!?」

…俺に聞くなよ。

俺だって、まさかこうなるとは思ってなかったさ。

動物園って言うから、てっきり学校から貸し切りのバスに乗って、送迎してもらえるものと思っていたのに。

そんなことはなかった。

新校舎の方は、立派なバスが朝から何台も出入りしてたからさ。

俺達も、あのバスのうちどれかに乗っていくんだとばかり思ってた。

でも、それらのバスは全部、新校舎の女子生徒の為に借りたバスだったらしく。

旧校舎のグラウンドには、バスは一台も停まっておらず。

代わりに、先生達が首を傾げている俺達を一列に並ばせ。

「それじゃあ行きましょうか」と一言言って、そのまま歩き始めた。

バス停まで歩くのかと思ったら、そういう訳でもなく。

このまま一列に並んで、動物園まで歩いていくそうだ。

小さな旗を持った引率教師に連れられて、ぞろぞろと歩道を歩く、男子高校生の列。

多分傍目から見ると、相当滑稽な姿に見えてたと思う。

…あのさぁ。

寿々花さんの学年みたいに、豪華客船を借りてくださいとは言わないよ。

でもせめて、バスを一台借りるくらいしてくれよ。

借りるまではしなくても、せめてバス停から普通に運行しているバスに乗せてくれよ。

騒いだり、他の乗客に迷惑はかけないからさ。

分かるよ?そりゃ。ひとクラス十数人しかいないんだもんな。

この半端な人数の為に、わざわざバスを借りるなんて勿体ない…。

…って、そんな訳あるかよ。

知ってんだぞ。今頃女子部の二年生はクルーズ船に乗りに行って。

一年生は、超高級品種の果物を栽培する果物農家に、いちご狩りに行ってんだろ。

それなのに、俺達男子部の一年生は、徒歩で近所の動物園に行くのか。

せめて、せめて何か乗り物に乗って行きたかったよ。
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