アンハッピー・ウエディング〜前編〜
そのまま俺達は、不平不満を口々に漏らしながら歩き続け。

ようやく、引率の担任教師が足を止めた。

目的地に到着したのだ。

やれやれやっと着いた、と胸を撫で下ろす前に。

…。

…えーっと。

俺達男子部一年生のクラスメイト皆、その建物の前で呆然としていた。

「…俺達、動物園に行くって聞いてたんだけど」

「あぁ。自分もそう聞いてた」

「僕もです」

だよな?

寿々花さんが言ってたじゃん。ゾウさんやキリンさんがいて…ツチノコやクラーケンはいないけど。

さっき雛堂が言ってたサルとか、あとはライオンとかチーターとかシロクマとか、そういう動物が檻の中に展示されている施設だと思ってた。

それが、一般的な動物園というものじゃないのか。

しかし、俺達が今いる施設。

ここは、そういう「動物園」ではなかった。

俺達が辿り着いたのは。

「『見聞広がるワールド 爬虫類の館』…だってさ」

…爬虫類の館?

なんか、思ってたのと全然違うんだけど。

こんな施設あったの?ここ…。

「…動物園か?これ」

「爬虫類も動物ですから、ある意味動物園なのでは?」

「…屁理屈だろ、それ…」

おかしいと思ったんだよ。

朝、徒歩で目的地まで行くって聞かされたとき。

「徒歩圏内に、動物園なんかあったっけ?」って。

学校の近くに、歩いていける距離に動物園があるなんて、聞いたことがない。

それでも、俺はこの辺地元じゃないから知らないだけで、もしかしたら近くに動物園があるのか、と思って。

信じて、ここまで小一時間かけて歩いてきたっていうのに。

辿り着いたのは、動物園(爬虫類限定)。

最早詐欺じゃん。

聞いてねーよこんなの。爬虫類の館に行くなら、最初からそう言えっての。

まぁ、動物園に行きたかった訳じゃないから別に良いけどな。

どうすんの?これ。

寿々花さんに何て言えば良いんだよ。

ただでさえあの人、動物園のことUMA博物館だと思ってんのにさ。

実際は普通の動物園ですらなく、爬虫類の館って…。

…何が置いてあんの?爬虫類の剥製とか?

爬虫類に関する研究資料が展示されてたりすんの?

来たばかりで悪いけど、早速帰りたくなってきた。

しかし、いくら不満があっても、勝手に帰る訳にもいかず。

担任教師に、一人一枚ずつ入場チケットを手渡され。

集合時間を伝えられ、各自施設内を自由に見学すること、と言われて、一時解散した。

…さぁ、どうする?
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