アンハッピー・ウエディング〜前編〜
そこには、全く見覚えのない髪の長い女性が立っていた。
俺達と大して歳は変わらないように見える。
その女性の傍らには、もう一人、同い年くらいの女性と、それから焦った様子の車椅子の男性もついていた。
「ちょ、ちょっと瑠璃華(るりか)さん。知らない人に話しかけちゃ駄目だって」
「ぴー、ぴー。しかし、今聞き捨てならないことを聞いたもので」
「…さっきから、その、ぴーぴーって何?」
「警告音です」
「…」
…警告音を口で言う人、初めて見た。
…えーっと。俺、一体どういう反応をしたら良いんだ?
と言うか、お宅誰?どちら様?
瑠璃華さんって呼ばれてたよな?
「失礼、あなた方のお話が聞こえてしまいました。私達アンドロイドの集音性能は、人間のそれを遥かに上回っていますから」
…アンドロイド?
「…えーっと。お宅はどちら様?」
「申し遅れました。私は『Neo Sanctus Floralia』第4局所属、Sクラス1027番『新世界アンドロイド』の久露花瑠璃華(くろばな るりか)と申します」
瑠璃華さんと呼ばれた、口で警告音を発していた人が、そう自己紹介をした。
続けて。
「同じく、『Neo Sanctus Floralia』第1局所属、Sクラス2017番の『新世界アンドロイド』、橙乃琥珀(とうの こはく)です。お見知りおきを」
その隣にいたもう一人の女の子が、自己紹介をした。
「…」
「…」
俺と雛堂は、無言で顔を見合わせ。
車椅子の青年だけが、「あちゃー…」みたいな顔で、二人のツレを見つめていた。
「…なぁ、もしかしてヤバい奴ら?」
「乙無と同じ匂いを感じるな…」
二人の女性達に聞こえないよう、俺と雛堂はこっそり耳打ちし合った。
…の、だが。
「ヤバい奴ら、とはどういう意味でしょうか」
「同じ匂い…。体臭のことですか?アンドロイドである我々に、体臭はないはずですが」
自称アンドロイドを名乗る二人の女の子達は、それぞれ首を傾げていた。
あんな小声で喋ったのに、何で聞こえてんの?
マジでやべー奴らだ。
乙無の色違いみたいな…。
「そんなことよりも、あなた方は今聞き捨てならないことを言いました」
「な、何…?」
「ヘビに大した差などないと。それに、爬虫類についての知識も充分ではないようですね」
「…」
…それは…。
「これは由々しき事態です。私と奏(かなで)さんにとって、この『見聞広がるワールド 爬虫類の館』は、思い出の場所。とても大切な場所です」
「…」
「よって、この思い出の地に、今日は琥珀さんもご招待したのですが…」
「はい。爬虫類の生態を知ることの出来る、とても興味深い場所だと思います。是非とも一戦、交えてみたいものです」
…。
…何と?
「これも何かの縁というものです。宜しければあなた方の為に、この私が施設を案内してさしあげましょう」
えっ。
突然の申し出に、俺はびっくりして言葉が出なかった。
俺達と大して歳は変わらないように見える。
その女性の傍らには、もう一人、同い年くらいの女性と、それから焦った様子の車椅子の男性もついていた。
「ちょ、ちょっと瑠璃華(るりか)さん。知らない人に話しかけちゃ駄目だって」
「ぴー、ぴー。しかし、今聞き捨てならないことを聞いたもので」
「…さっきから、その、ぴーぴーって何?」
「警告音です」
「…」
…警告音を口で言う人、初めて見た。
…えーっと。俺、一体どういう反応をしたら良いんだ?
と言うか、お宅誰?どちら様?
瑠璃華さんって呼ばれてたよな?
「失礼、あなた方のお話が聞こえてしまいました。私達アンドロイドの集音性能は、人間のそれを遥かに上回っていますから」
…アンドロイド?
「…えーっと。お宅はどちら様?」
「申し遅れました。私は『Neo Sanctus Floralia』第4局所属、Sクラス1027番『新世界アンドロイド』の久露花瑠璃華(くろばな るりか)と申します」
瑠璃華さんと呼ばれた、口で警告音を発していた人が、そう自己紹介をした。
続けて。
「同じく、『Neo Sanctus Floralia』第1局所属、Sクラス2017番の『新世界アンドロイド』、橙乃琥珀(とうの こはく)です。お見知りおきを」
その隣にいたもう一人の女の子が、自己紹介をした。
「…」
「…」
俺と雛堂は、無言で顔を見合わせ。
車椅子の青年だけが、「あちゃー…」みたいな顔で、二人のツレを見つめていた。
「…なぁ、もしかしてヤバい奴ら?」
「乙無と同じ匂いを感じるな…」
二人の女性達に聞こえないよう、俺と雛堂はこっそり耳打ちし合った。
…の、だが。
「ヤバい奴ら、とはどういう意味でしょうか」
「同じ匂い…。体臭のことですか?アンドロイドである我々に、体臭はないはずですが」
自称アンドロイドを名乗る二人の女の子達は、それぞれ首を傾げていた。
あんな小声で喋ったのに、何で聞こえてんの?
マジでやべー奴らだ。
乙無の色違いみたいな…。
「そんなことよりも、あなた方は今聞き捨てならないことを言いました」
「な、何…?」
「ヘビに大した差などないと。それに、爬虫類についての知識も充分ではないようですね」
「…」
…それは…。
「これは由々しき事態です。私と奏(かなで)さんにとって、この『見聞広がるワールド 爬虫類の館』は、思い出の場所。とても大切な場所です」
「…」
「よって、この思い出の地に、今日は琥珀さんもご招待したのですが…」
「はい。爬虫類の生態を知ることの出来る、とても興味深い場所だと思います。是非とも一戦、交えてみたいものです」
…。
…何と?
「これも何かの縁というものです。宜しければあなた方の為に、この私が施設を案内してさしあげましょう」
えっ。
突然の申し出に、俺はびっくりして言葉が出なかった。