アンハッピー・ウエディング〜前編〜
突然、予想もしていない展開に直面。

館内で出会った見知らぬアンドロイド(?)が、俺達の専属ガイドに立候補している。

…どういう展開だよ?

「え、えーっと…」

「ご安心ください。私は以前この『爬虫類の館』に来たことがあります。館内マップを脳内にダウンロードしてあるので、マップ無しでも歩けます」

まさかのリピーター。

爬虫類…好きなんだろうか。

「館内の知識については、一通り熟知しているつもりです。どうかお任せ下さい」

と、胸を張る自称アンドロイド、久露花瑠璃華。

更に。

「私はこの施設は初めてですが、先輩方に聞いて、爬虫類の知識については一通り勉強しています。分からないことがあれば、私に聞いてください」

と、何故かちょっと張り合ってるもう一人の自称アンドロイド、橙乃琥珀。

いや、別に良いんで。

ガイドとか要らないんで。そこまで爬虫類に興味ないんで。

…しかし。

「折角だし、案内してもらえば良いじゃないですか」

乙無がそう言った。

何だと?

「アンドロイドに案内してもらえるなんて、滅多にない機会ですよ」

「いや…。アンドロイドって…」

あんた、まさか本気にしてんのか?

まぁ、世の中には自称邪神の眷属も存在することだし。

自称アンドロイドがいても、おかしくはない…か。

…いや、おかしいだろ。何流されてるんだ俺。

「どうする?雛堂…」

やっぱり怪しいから、急いでこの場を離れた方が良いんじゃないか。

しかし、意外なことに雛堂は。

「良いじゃん、案内してもらおうぜ」

まさかの快諾。

「…本気かよ?」

「だって、二人共めっちゃ美人じゃん?これって逆ナンって奴?」

この野郎。下心かよ。

まともな奴がいないぞ。俺以外。

すると。

「…あの、大丈夫だよ。二人共ちょっと…いや、かなり変わってるけど…でも、怪しい人じゃないから」

二人の自称アンドロイドの隣にいた、車椅子の男性が言った。

…どうやら、この人だけはまともなようだな。

かろうじて俺以外にもまともな人がいて、安心したよ。

「本当に、好意で君達に案内したいって言ってるんだと思うよ。瑠璃華さん、本当爬虫類好きだから…」

とのこと。

…爬虫類好きな女子高生って、なかなか珍しい気がする。

大抵、女の人は怖がるもんだと思ってた。ヘビとかワニとか。

俺でさえビビるのに。

…ま、いっか。

怪しさ満点の自称アンドロイド女子高生だが、確かに怪しくはあるけど悪い人ではなさそうだし。

乙無も雛堂も乗り気だし…。

これも何かの縁だと思って、ガイドを頼んでみよう。

「じゃあ、えっと…宜しくお願いします」

「こちらこそ、宜しくお願いします」

と、礼儀正しく久露花瑠璃華が答えた。
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