アンハッピー・ウエディング〜前編〜
「…なぁ、何で戦うこと前提なんだ?」

雛堂が、俺の疑問を察したかのように、ボソッと俺に耳打ちしてきた。

…俺が聞きてぇよ。

「さぁ…何でなんだろうな…」

戦わないから。

普通にこの国で生きてたら、ヘビとバトルすることはないだろう。

ましてや、キングコブラやニシキヘビと戦う機会なんて。

動物園の職員でさえねーよ。

「…ごめんね、その…瑠璃華さん、ヘビが好きで…強そうな生き物を見るとつい戦ってみたくなるみたい」

と、車椅子の青年が謝ってきた。

この人が悪い訳じゃないのに。

車椅子の青年自身はヘビを見たくないのか、必死に檻から目を逸らしていた。

分かるよ。実物を目の前にすると、結構怖いもんな。

檻の中でじっとして、とぐろ巻いてるだけなんだけどな。

猛毒だとか聞かされたら、余計近づきたくねぇよ。

すると。

「ご忠告ありがとうございます。ですが、僕は邪神の眷属で、イングレア様の御加護を受けた身ですから。ヘビの毒でさえ、僕には効きません」

ここぞとばかりに、ドヤァ、と乙無が胸を張って言った。

恥ずかしい奴だよ。

「そうですか。それなら安心ですね」

「えぇ。安心です」

意外なことに、なんか理解し合ってる。

中二病同士気が合うってことなのか。そうなのか?
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