アンハッピー・ウエディング〜前編〜
「大体、ナンパの経験なんてあるのか?普段はこうして、実質男子校みたいな学校で過ごしてるのに」

ついでに雛堂は、家の中でも男兄弟ばっかりなんだろ?

ナンパに成功するほど、女性に免疫があるとは思えない。

「見様見真似で誘うつもりか?好きにすれば良いけどさ。見様見真似のおべっかで捕まるような女なんて、ろくな相手じゃないと思うけど」

所謂、誰にでもついていく尻軽女って奴だな。

お互い遊びで割り切るつもりか?雛堂はそれで満足なのか。

いや、それだけならまだ良い。

「逆に、騙されて貢がされて、詐欺にでも遭ったらどうするつもりだ?」

高いツボや、怪しいお薬なんか買わされたり。

一生を棒に振る可能性だってあるんだぞ。

青春の夏どころか、一生が終わる夏になってしまう。

それは嫌だろ?

「身の程を弁えて、冷静な行動をしろよ。子供じゃないんだから」

「も…もうやめたげてよっ!」

雛堂、涙目。

おっと。悪いな。

今、心底軽蔑してたからさ。つい言いたいこと全部言ってしまった。

でも、今の雛堂には良い薬になったかもな。

「分かってるっての!そうですよ、自分はナンパの経験なんかないし、彼女いない歴=年齢ですよ!」

そうか。

「でも、夢を見るくらい良いだろ!?」

「夢を見るのは勝手だが、現実も見ろよ」

「畜生、今日の星見の兄さん、なんかキレッキレじゃね?さっきから自分、めっちゃ心がいてぇ!」

それは悪かったな。

最近暑いからかな。ちょっとイライラしてんのかもしれねぇわ。

「分かったよ…分かったよ。ナンパは諦めるよ」

「そうしろ」

モテない陰キャで結構。

強引に女性を誘わないと相手にしてもらえないなら、最初から一人で過ごしてた方がマシってもんだ。

「でも、なんか予定は立てたいじゃん?どっか遊びに行く予定は」

「どっかって?…旅行とか?」 

「いや、旅行は無理。高いし」

「今から旅行の計画立てても、ホテルの予約を取るの難しそうですもんね」

と、乙無。

そういえば、そうだな。

夏休みのシーズンだからな。観光地のホテルは何処も満室だろう。

ハムスターランドとかも。多分凄い人なんだろうな。

「星見の兄さんは?旅行行くのか」

「俺?」

「そうだよ。自分にあれほど酷いこと言ったんだからな。きっとさぞや壮大な、夏休みの計画を立ててるんだろうな!?」

何で逆ギレ?

しかし…夏休みの予定、か。

…正直、何も考えてないな。

いつも通り過ごすつもりだったから。
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