アンハッピー・ウエディング〜前編〜
この人、俺が来るまで毎日カップ麺とレトルト食品食べてたのは、これが理由だったんだな。

嫌いな食べ物が多過ぎて、食べられるものの種類が少ないから。

それで、野菜の入ってないインスタント食品ばっかり食べてた訳か。

栄養が偏るなぁ…。

これは早急に…何とかするべきだぞ。

俺は好きだからな。ピーマンも春菊も長ネギも。

これから先の生活で、こういった野菜を一切使えないっていうのは痛い。

「じゃあ…逆に、好きな食べ物は?」

それだけ嫌いな食べ物ばっかりあったら、むしろ好きなものを探す方が難しそうだ。

「好きな食べ物?うーん…。めるちゃん正麺バター醤油味かな」

そういや言ってたな。お気に入りだって。

案の定、好きなものを聞いたらカップ麺を答えやがった。

そうじゃないんだよ。カップ麺が好きなのは良いんだけど。

「他には?」

カップ麺じゃなくて、家庭料理で何か。

「他には、何だろうなー…」

「例えば、そう…カレーとか。ハンバーグとかグラタンは?」

「うん。食べられるよ」

好きなのか。そりゃ良かった。

「ミートソースパスタとか…エビフライとかは?」

「うん、好き」

成程、よく分かった。

子供舌なんだな。物凄く。

お子様ランチに乗ってるもの、全部好きじゃん。

「それとね、一昨日に悠理君が食べさせてくれたオムライス。すっごく美味しかったから、私、あれが好きだよ」

そりゃどうも。

でも、オムライスもお子様ランチの定番メニューだしなぁ。

「あんたが、凄い子供舌なんだってことが分かったよ」

「…えへへ…」

「褒めてないからな?」

子供舌って、意味分かってるか?馬鹿にされてんだよ。

今お嬢さんが言った、嫌いな野菜の種類…ちゃんと覚えておかないとな。

今はまだ良いとして、これから先もこのままだと困るから…近いうちに、対策を講じなければならないことが分かった。
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