アンハッピー・ウエディング〜前編〜
持ってきた花火を、全部消費した後。

「はー。楽しかったー」

寿々花さん、大満足のご様子。

良かったな。

でも、忘れちゃいけないことが残ってるぞ。

「寿々花さん。忘れてないよな?」

「ほぇ?何を?」

「りんご飴。食べたいって言ってただろ?」

「…!」

思い出したようだな。

あれだけ食べたがってたから、わざわざりんご買ってきて、調べて自分で作ったんだぞ。

屋台のとは違うだろうけど、それっぽいものくらいは出来たから。

食べてみて欲しい。

「色々作ってあるからさ。家に入って食べようか」

「わーい。りんご飴〜」

花火の後片付けは、とりあえず後回し。

自作の屋台飯を食べて、花火大会気分を味わおうじゃないか。

俺は、昼間に作った屋台料理の数々をテーブルいっぱいに並べた。

一部市販品もあるけれど、一応、寿々花さんが食べたがってたものは、全部揃ってるぞ。

「こっちが綿あめ、こっちがベビーカステラで…。これがりんご飴な」

「やったー、いただきまーす」

寿々花さんはまず一番に、りんご飴に齧り付いた。

齧るって言うか…飴だから、舐めてるんだけど。

「どうだ?味のほどは。…美味いか?」

「うん!すっごく美味しい。甘くてりんごの味がして、りんご飴ってこんなに美味しいんだね」

「見様見真似なんだけどな。…喜んでもらえたようで良かった」

という、俺と寿々花さんのやり取りを見て。

「…どう思う?乙無の兄さん。こいつら、これみよがしにリア充を見せつけてきやがって…」

「もぐもぐ。ベビーカステラ美味しいですね」

「…おめーはブレねぇなぁ…」

雛堂と乙無が、何やらぶつぶつ呟いていた。

何だよ。言いたいことがあるならはっきり言えよ。

「しっかし、壮観だな…。これだけ作るの大変だったろうに」

と、雛堂は食卓に並ぶ料理の数々を見て言った。

そりゃまぁ、大変だったけど。

「でも、一部は買ってきたものだし…」

綿あめとか、ベビーカステラな。これらはお店で買ってきた。

「それに、手間のかかるものは作ってないからな。焼きそばとか、その焼きとうもろこしだって、トースターで焼いたものだし」

寿々花さんのリクエストの他にも、俺の判断で、いくつかそれっぽい屋台料理を準備してみた。

だって、寿々花さんのリクエストは焼きそば以外、全部甘いものだったから。

とは言っても、大したものは用意してない。

焼きとうもろこしとか、きゅうりの一本漬けとか。

あとは唐揚げと、フライドポテトな。

この辺は、屋台飯の定番だよな。

唐揚げは自分で揚げたけど、フライドポテトは冷凍食品である。

それなのに。

「悠理君のご飯は、いつもとっても美味しいんだよ」

何故か、寿々花さんがドヤ顔でそう言った。

…何であんたがドヤ顔なんだよ。
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