アンハッピー・ウエディング〜前編〜
「色々考えたんだけど、どれにしようか迷ってるの」

「そっか。別に何でも良いよ」

…って、「何でも良い」が一番困るんだよな。

分かるよ。俺だって「夕飯何が良い?」って聞いて「何でも良い」って言われたら、めっちゃ困るもん。

かと言って、面倒臭い注文をされても困るんだよな。

ミックスフライ定食で、とか言われたら溜め息出そうだもん。

適度に作るのが簡単で、無難なメニューを選んで欲しい。

誕生日プレゼントもそれと同じだよな。

無理難題を押し付けるのではなく、比較的手に入れやすいプレゼントを…。

「何種類か候補を考えてみたんだけど、悠理君、その中から決めてくれる?」

選択形式か。

良いよ。じゃあ、その中から一番、手に入れやすそうなプレゼントを選ぼう。

「分かった。良いよ」

「えっとねー、まずは鳩時計」

…鳩時計?

めちゃくちゃ予想外なプレゼントが飛び出してきて、言葉が出なかった。

「30分おきに鳩さんが出てきて、くるっぽーくるっぽーって鳴くんだって。面白いかなーって思って」

…面白いか?それ。

3回目くらいで飽きそう。

「…それ、夜でも鳴くの?」

「うん」

「じゃあ却下だ」

「えー」

えー、じゃねぇんだよ。

夜中まで30分おきに出てきて、くるっぽくるっぽと鳴かれてたまるか。

不眠症になるわ。

つーか、何故鳩時計…?

自分が欲しいんじゃないのか?それ。

プレゼントって、自分が欲しいと思うものをあげるのが基本だぞ。

自分が欲しいと思わないものを人にあげるのは、結構ハードル高いと思う。

余程相手の好みを理解してないと、良かれと思って用意しても、盛大にスベる可能性があるからな。

「二つ目の選択肢は?」

「えっとね、大根の抱き枕」

「…要らね…」

しまった。つい素で反応してしまった。

…何で大根…?

俺、大根大好きなんて言ったことあったっけ?

大根は確かに好きだけど、大好きってほどじゃないぞ。

「えっ。駄目なの?ちゃんと葉っぱの部分も付いてるよ。触ったらもふもふしてるんだって」

「いや、そういう問題じゃなくて…」

「…ニンジンの方が良かった?」

「…そういう問題でもなくてな…」

抱き枕は良いんだよ。でも、何で野菜…?

つーか、そんな抱き枕実在するの?

俗に言う、おもしろプレゼントって奴?

もらったときは笑い飛ばせるけど、しばらく経って冷静になると、途端に冷めた気持ちになるアレな。

「駄目なの?…それじゃあ、必然的に三つ目の選択肢になっちゃうよ」

「…三つ目は何なんだ?」

ここまでの二つの選択肢からして、ろくなプレゼントじゃな、

「えっとね、ケチャップ一年分」

「…ケチャップ?」

「うん。前食べたお菓子で、シールを集めて応募したら一年分のお菓子をプレゼント、っていうキャンペーンをやっててね。あれって面白いなーって思って」

あー、たまに見るよな。あれ。

…ああいうのって、本当に当たるのか?世界の何処かに当選した人は実在すのだろうか。

俺の周りでは、ああいうの当たったって言ってる人を見たことがないが。
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