アンハッピー・ウエディング〜前編〜
実質、有給休暇みたいなものだな。
この券を使ったら、俺は一日仕事から解放されて、ゆっくりお殿様みたいに過ごすことが出来ると…。
成程、さすが発想がお子様だな。寿々花さんは…。
鳩時計よりは、何十倍かマシ。
「今日は悠理君のお誕生日だから、その券を使ってね。今日は一日、悠理君はお殿様になるんだよ」
「お殿様…って言われてもな…。何すれば良いんだ?」
「何もしなくて良いんだよ。ゆっくり羽根を伸ばして、お殿様みたいに『上様のおなーりー』ってすれば良いの」
何処で覚えてきたんだ?そんな言葉。
…それよりも。
何もしなくて良い…か。この家に来てからずっと、毎日家事に追われてたから。
何もしなくて良いと言われると、逆に違和感があるって言うか…。
「悠理君、いつも働き者だから。たまには休まなきゃ駄目だよ」
そりゃどうも。
そうだな。誕生日くらい、ちょっと家事をサボっても良いかも…と、思っていると。
寿々花さんが、とんでもないことを言った。
「その代わり、今日は私がおうちのことをするから」
…えっ。
俺はぎょっとして、意気込む寿々花さんを見つめた。
やる気に満ち満ちている。…いつになく。
寝不足だろうに。本当に大丈夫か?
「うちのことって…」
「ご飯作ったり、お掃除したりお洗濯したり…。朝ご飯は、悠理君が作っちゃったけど…。…でも、それ以外は全部私がやる。悠理君がいつもやってること、全部」
…マジで?
本気か。本気でやるつもりなのか?
勇気と無謀を履き違えるな、って偉い人が言ってただろ。知らないのか?
「いや…でも、さすがに…。寿々花さんに使用人の真似事をさせるのは…」
無月院家のお嬢様が、使用人やメイドの仕事なんて。
それは俺の役目だろ。
そんなこと寿々花さんにさせたなんて知られたら、本家に何て言われるか。
…しかし。
「大丈夫。いつも悠理君がやってるのを見てるから」
何処から出てくるんだ、その自信は。
「悠理君がいつもやってるのに、私がやっちゃ駄目ってことはないでしょ?」
「それは…駄目ではない…かもしれないけど…」
「じゃあ、決まりだね。今日は私が全部家事をするから、悠理君はお殿様」
一方的に決められてしまった。
不安しかない。不安しかないんだが…。
いつになくやる気満々だから、「やっぱりやめて」と言える雰囲気でもなく。
…ヤバそうだったら、止めよう。
ごめんな、無月院本家の皆様。
俺は今日お殿様らしいから、寿々花さんに任せてみるよ。
この券を使ったら、俺は一日仕事から解放されて、ゆっくりお殿様みたいに過ごすことが出来ると…。
成程、さすが発想がお子様だな。寿々花さんは…。
鳩時計よりは、何十倍かマシ。
「今日は悠理君のお誕生日だから、その券を使ってね。今日は一日、悠理君はお殿様になるんだよ」
「お殿様…って言われてもな…。何すれば良いんだ?」
「何もしなくて良いんだよ。ゆっくり羽根を伸ばして、お殿様みたいに『上様のおなーりー』ってすれば良いの」
何処で覚えてきたんだ?そんな言葉。
…それよりも。
何もしなくて良い…か。この家に来てからずっと、毎日家事に追われてたから。
何もしなくて良いと言われると、逆に違和感があるって言うか…。
「悠理君、いつも働き者だから。たまには休まなきゃ駄目だよ」
そりゃどうも。
そうだな。誕生日くらい、ちょっと家事をサボっても良いかも…と、思っていると。
寿々花さんが、とんでもないことを言った。
「その代わり、今日は私がおうちのことをするから」
…えっ。
俺はぎょっとして、意気込む寿々花さんを見つめた。
やる気に満ち満ちている。…いつになく。
寝不足だろうに。本当に大丈夫か?
「うちのことって…」
「ご飯作ったり、お掃除したりお洗濯したり…。朝ご飯は、悠理君が作っちゃったけど…。…でも、それ以外は全部私がやる。悠理君がいつもやってること、全部」
…マジで?
本気か。本気でやるつもりなのか?
勇気と無謀を履き違えるな、って偉い人が言ってただろ。知らないのか?
「いや…でも、さすがに…。寿々花さんに使用人の真似事をさせるのは…」
無月院家のお嬢様が、使用人やメイドの仕事なんて。
それは俺の役目だろ。
そんなこと寿々花さんにさせたなんて知られたら、本家に何て言われるか。
…しかし。
「大丈夫。いつも悠理君がやってるのを見てるから」
何処から出てくるんだ、その自信は。
「悠理君がいつもやってるのに、私がやっちゃ駄目ってことはないでしょ?」
「それは…駄目ではない…かもしれないけど…」
「じゃあ、決まりだね。今日は私が全部家事をするから、悠理君はお殿様」
一方的に決められてしまった。
不安しかない。不安しかないんだが…。
いつになくやる気満々だから、「やっぱりやめて」と言える雰囲気でもなく。
…ヤバそうだったら、止めよう。
ごめんな、無月院本家の皆様。
俺は今日お殿様らしいから、寿々花さんに任せてみるよ。