アンハッピー・ウエディング〜前編〜
…と、任せてみたのは良いものの。

「よーし。まずはお皿洗いをしよう」

まずは、朝食で使った皿を片付けることからスタート。

…皿洗いくらいは、さすがにな?

幼稚園児でも、皿洗いの手伝いくらいは出来るだろう?

そう思いながらも、俺はハラハラと落ち着かない気分で、遠くから寿々花さんを見張っていた。

万が一、洗剤の泡で滑って、皿を割るようなことがあったら。

そのときは、すぐに俺が代わろう。

「えーと、まずはこのスポンジに、洗剤をかける…と。…洗剤、何処だろう?」

きょろきょろ、とシンクの周りを見渡す寿々花さん。

そこ、すぐそこにあるじゃん。シンクの横に。

それだよ、食器用洗剤。

しかし寿々花さんは、食器用洗剤の存在に気が付かない。

「何処かなー。洗剤…何処かなー」

戸棚の中や、冷蔵庫の中を探している。

何処を探してるんだよ。冷蔵庫に洗剤入れる馬鹿がいるか。

「うーん。どれか分からない…。…よし、これで洗おう」

結局寿々花さんは、すぐそこにある食器用洗剤の存在に気づかず。

手洗い用のハンドソープを持ってきて、それをスポンジに垂らしていた。

ニアピンだけど、でも違う。

まぁ良いや。初っ端から口を出すのもアレだし。

後で俺がよーく洗い直すから。

「あわあわ。あわあわ〜。ふわふわ〜」

スポンジと食器を泡まみれにして、自身もあわあわ言いながら、楽しそうに食器洗いを開始。

水出しっぱなしじゃん。止めろよ。

「きゅっきゅっ、って言ったら綺麗になってるんだよ。きゅっきゅっ。…よし、綺麗になったー」

口で言ってるけど、それはセーフなのか?

あぁ。なんかもう、見ていられない感じになってきた。

が、一応…大量の水と大量のハンドソープを使いながらも、皿を落として割るようなことはなかった。

良い。もう良いよ。怪我しないなら何でも良い。

子供の初めてのお使いを見守る、母親になった気分。

お殿様になってくつろぐどころか、むしろ心配で全然落ち着かないという。

しかも。

「よし、次はお洗濯だ」

…またしても、地雷臭漂う危険なことを始めようとしてるな。

洗濯が地雷って、それどういうことなんだよ。
< 464 / 505 >

この作品をシェア

pagetop