アンハッピー・ウエディング〜前編〜
すると。

「…ん?…ん…?」

「ね、美味しいでしょ?」

次に麺を啜ってみる。見た目に反して、つるっとした喉越し。

物凄く悔しい。物凄く悔しいのだけど…。

「…美味い…」

「でしょー」

何だこれ。信じられないくらい美味しいんだけど。

嘘だろ?この見た目で。何でこんな…普通に美味しいんだ?

寿々花さんの言った通り、さっぱりしたあっさり系のスープで。

異臭とか薬臭さとか、独特の癖とかも全然なく。

麺は、口に入れると芳ばしい香りがして、あっさりしたスープによく絡んでいる。

これが青薔薇味なのか?

控えめに言って、物凄く美味い。

さすが『ブルーローズ・ドリーム号』限定商品。

古今東西、あらゆる国のあらゆる人種の口に合うように、研究に研究を重ねたんだろうな…。

まさか、こんなに美味しいインスタントラーメンに出会えるとは。

「見直したよ。外国のインスタントラーメンって、どれもこれも不味いもんだと思ってた」

「そんなことないよ。ちゃんと美味しいのもあるよ?」

そうだな。初めてそのことを実感したよ。

意外と美味しいのもあるじゃん。

何だよ。空気清浄機まで用意したのに。要らなかったな。

空気清浄機の奴、「あれ?自分の出番は…?」とか思ってそう。

ごめんな。今日、あんたの出番ないみたいだ。

これなら普通に食べられる。

「美味しいけど、これ原材料何なんだろうな…?」

やっぱり炭なんだろうか。イカスミ…?

白い食べ物ならたくさん思いつくけど、黒い食べ物ってなかなか思いつかないもんな。

海苔とか?でも、外国の人って海藻はあんまり食べないって聞いたことあるんだけど。

「何なんだろうね…?…何かの内臓とか脳みそとかだったりしてー」

おいおい。恐ろしいことを言うなよ。

「そんな馬鹿な…。普通の着色料なんじゃね?」

「そうなのかなー」

今更だけど、外国製の着色料を使ったラーメンなんて、食べて大丈夫なんだろうか。

まぁいっか。少なくとも、味は不味くない。むしろ美味しいし。

これで腹壊すなら、本望ってことで。

今回ばかりは、美味しく完食させてもらうとしよう。

そう思って、どんぶりの中身を半分くらい平らげた頃。



…突然、我が家のインターホンが鳴らされた。
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