アンハッピー・ウエディング〜前編〜
…寿々花さんが、円城寺に拉致されるようにして連れて行かれたので。

残された俺は、最高にイラつきながら残された青薔薇味ラーメンを食べた。

あんなに美味しかったのに、なんか味がしなくなった気がする。

きっとラーメンが伸びてしまったせいだな。そうに違いない。

…どうするよ。この後。

寿々花さん、出掛けて行ってしまったしな…。

オペラだってよ。オペラ?何それ美味しいの?

生まれてこの方、そんなもの見たことがない。

いかにも上流階級って感じだよな。オペラとかバレエとかミュージカルとか…?

どうも済みませんね。高尚な芸術とは全く無縁で。

どうせ俺は、感性が貧弱な貧乏人ですよ。悪かったな。

大体、何なんだよあの男は。

自分から寿々花さんなんて願い下げだ、と婚約破棄しておいて。

突然うちにやって来たかと思えば、さっさと支度させて連れていきやがって。

何考えてんだ。

最高にムカつきながらラーメンの残りを食べ、歯を磨いて、食器を片付け。

何だかじっとしていられなくて、俺はリビングに勉強道具を持ってきて、夏休みの宿題を始めた。

実はもうほとんど終わってるんだけどな。宿題。

面倒なのだけが残ってるんだよ。読書感想文と小論文、それから英文読解。

ただでさえイライラしてるときに、やるような宿題ではない。

読書感想文どうしよう。何の本読めば良いんだよマジで。

大体な、読書感想文なんて小・中学生の宿題だろ。何で高校生にもなって本の感想なんか書かなきゃいけないんだ。

なんて、生産性のない愚痴が頭をよぎるくらいだから、俺がどれほどイラついているかは推して知るべし。

…すると、その時。

またしても、突然我が家のインターホンが鳴らされた。

「…」

…誰だよ。今度は。
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