アンハッピー・ウエディング〜前編〜
それからしばらく、雛堂と乙無の三人で人生ゲームを楽しんだが。

三回やって、一回目の人生はブラック企業で低賃金で一生扱き使われ。

二回目の人生は、結婚して子供が出来るも、離婚されて慰謝料をぶん取られ。

三回目の人生は、詐欺師に騙されて億単位の借金地獄。

ろくな人生じゃなかった。

ひでぇよ、これ。最近の人生ゲームって、こんな世知辛いの?

ゲームでさえ、思い通りにならない人生なんて。

一方雛堂は三回共、大金持ちではないものの、特に借金もなく。

比較的安定した、順風満帆な人生を送った。

更に乙無は、三回共大富豪で左団扇の人生。

この格差よ。

ルーレットを回す度に、俺の人生は悪い方に転がっていき。

対する乙無は、ルーレットを回す度に、思わぬ幸運に恵まれていた。

あまりにも酷くて、俺は途中からもう、能面みたいになってたよ。

そんな俺に、さすがの雛堂も気を遣ってくれたらしく。

三回目のゲームが終わった後。

「なんか、うん…。よし、今日はもう帰るか!」

物凄く不自然に、人生ゲームを切り上げた。

あぁ、そうしてくれ。

このまま四回目の人生を始めようものなら、今度はもう、ある日突然通り魔に刺されて死ぬんじゃないの。

それくらい酷い人生だった。

「そんじゃ、星見の兄さん。またな!今度アイス奢るから、元気出してくれ」

「あぁ…。期待せずに待ってるよ」

アイス一個じゃ割に合わんよ。俺の今日一日の不幸の積み重ねを考えたら。

…でも、雛堂と乙無が来てくれて助かったかも。

少なくとも、気は紛れたからな。

二人が帰って一人にから、俺は再び寿々花さんと円城寺のことを思い出した。

今頃、オペラ終わったかな?

これから一緒に、高級レストランにフレンチのフルコースを食べに行くんだろうか。

ドレス姿の寿々花さんが、気取った円城寺と仲良く歩いている姿を想像して。

「…ちっ」

俺は、思わず舌打ちを漏らしたのだった。
< 498 / 505 >

この作品をシェア

pagetop