アンハッピー・ウエディング〜前編〜
俺が今日から通うことになる学校の名前は、私立聖青薔薇学園男子部である。

いかにもメルヘンチックな名前の学校である。

以前にも言った通り、俺は正規の入学試験を受けて入学した訳じゃない。

無月院本家の当主様が、学校の偉い人に口利きしてくれたお陰で入学出来た…所謂裏口入学である。

勿論、このことは誰にも内緒だ。

先生方は、俺が裏口入学生だと知ってるだろうけど。

それはともかく。

入学試験を受けていないから、俺は入学式の今日、初めて今日から通うことになる学校を目にしたのである。

学校のパンフレットを事前にもらっていたから、大体こんな感じの学校…というのは知っていたけど。

やっぱり、実際に目にしてみないと分からないことって、あるよな。

学校の雰囲気とかさ。

のんびりした空気とか、真面目で厳格そうな空気とか…。学校の方針や生徒達の気質によって、学校の雰囲気って大きく変わるだろう?

俺自身は、凄くゆるゆるーっとした中学校に通っていたから。

高校になって、いきなりクソ真面目で厳しい校風の学校に入学したら、慣れるまでかなりきつそうだ。

学校パンフを見たところ、いかにも高嶺の花って感じの学校みたいなんだよな。

そりゃ、聖青薔薇学園と言えば、有名なお嬢様学校だからな。

金持ちのお嬢さんお坊ちゃんが通う学校、という訳だ。

うちのお嬢さんみたいな、立派なお家柄の子女が集まった学校…。

平民出身で、おまけに貧乏性な俺が通うには、かなりハードルの高い学校だと思われる。

…今更だけど俺、大丈夫なんだろうか?

新しい学校…馴染めると良いんだが。

クラスメイトからはハブられるかもな。

まぁ、それはそれで別に良い。

そのくらいの覚悟はしてるよ。一応な。

そもそも、学校って友達作りに行くところじゃないから。

勉強しに行くところだから。友達なんていてもいなくても良い。

高卒の資格を取りに行くところだと思おう。

本家からお声がかかってなかったら、俺は中卒で働くつもりだったのだ。

馴染めないお嬢様学校でも、無償で学校に通わせてもらえるってだけで、俺にとっては充分だ。

返済不要の奨学金をもらったのだと思おう。

自分にそう言い聞かせて、俺は真新しい制服に身を包み。

バスに乗って、新しい学校の入学式に向かった。
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