アンハッピー・ウエディング〜前編〜
「おぉ…。すげー…」

聖青薔薇学園の校舎を、初めてこの目で見て。

俺は、思わずそう呟いてしまった。

学校と言うより、何処ぞの王様の宮殿みたいなただ住まいだ。

シミ一つない、頑丈そうで真っ白な校舎の壁。

その校舎をぐるりと囲むように、花の咲き乱れる花壇が並んでいた。

洒落たデザインの校門を潜ると、ピカピカに磨かれた石畳が校舎の入り口まで続いている。

校舎の入り口付近には、これまた洒落た小薔薇のアーチがある。

外からは見えないけど、パンフレットによると、この学校。

学校の癖に中庭があって、テラスみたいになってるんだってさ。

中庭も花畑みたいにたくさんの花が咲いてて、ベンチがたくさん置いてあって。

ピクニック気分で、昼休みを満喫することが出来るそうだ。

なんと、噴水まであるらしいぞ。

要るか?噴水。学校に。

何の為に存在してるのか、俺にはさっぱり分からねぇよ。

廊下、体育館、玄関に至るまで全室エアコン完備。

スロープ付きの階建の他に、校舎内にはエレベーターが5基も設置されているとか。

学校にエレベーターって、マジ?

俺が通っていた地元の中学には、階段しかなかったぞ。

パンフレットによると、この校舎はまだ数年前に建てられたばかりだそうだ。

そりゃあ、最新鋭の設備を整えていることだろう。

屋内プールに、温室、広々とした図書館、テニス場まであるそうだぞ。

更には、校舎内にベーカリーやカフェ、小さなレストランなんかも入っていて。

昼休みには、そのようなお店を利用出来るんだそうだ。

学校の昼休みに、カフェでケーキ食べながら紅茶を飲めるらしい。

贅沢にも程があるだろ。

学校って、勉強しに来るところなんだって知ってるか?

優雅にお茶しに来るところじゃねーから。

金持ちの考えることって、分かんねぇや。

そして、そんな学校に通っているのは、県内選りすぐりのお嬢様ばかり。

今日は入学式ということもあって、真新しい制服に身を包んだお嬢様達が、入学式受付場をうろうろしていた。

白いワンピースタイプの制服で、胸元にブルーのリボンを結んでいる。

ワンピースタイプの制服って、なかなか珍しいよな。

漫画でしか見たことねぇよ。

清楚で可憐、まさにお嬢様学校の制服って感じ。
 
更に、入学式ということもあって、新入生に混じって多くの父兄の姿が見られた。

父兄が、これまた…いかにも金持ち然としていて。

恐らく、新入生の父親なのだろう。

素人の目から見ても分かる、お高そうなスーツを完璧に着こなした男性や。

その隣には、完璧に髪をセットして、爪にも華やかなマニキュアを塗った、淑やかな女性が立っていた。

あっちは母親なんだろうな。

こんな学校に娘を通わせる親なんだから、それなりのお家柄なんだろうなぁ。

やっぱり、俺って場違い。

本当にこんなところでやっていけるのか、心配で仕方ないよ。
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