アンハッピー・ウエディング〜前編〜
…まぁ、なんだ。

お嬢様って凄いなぁ、なんて遠くから眺めていても、何も始まらないし。

裏口入学だろうと、分不相応だろうと、俺が今日からこの学校に通う事実に変わりはない。

…覚悟、決めるしかないだろう。

俺は一つ深呼吸をして、入学式受付に向かった。

受付で名前を告げると、入学式の資料と番号札をもらって、入学式の行われる講堂に案内されるようだ。

で、その会場で、さっきもらった番号札の貼られた椅子に着席するように、とのことらしい。

受付を済ませた新入生のお嬢様達は、揃って講堂に歩いて向かっている。

しかし、講堂って。

俺の中学、入学式も卒業式も、学期末の修了式も、全部体育館で行ってたよ。

それが普通だと思ってた。
 
まさか、式の為だけに利用する立派な講堂が存在するとは。

体育館で、パイプ椅子並べてやれば良くね?

学期末の修了式や、朝の集会のときなんて、パイプ椅子すら並べずに、そのまま床に座ってやってたぞ。

でも、この学校に入学するお嬢様達は。

まさか、床に腰を下ろするなんて有り得ないんだろうな。

全く羨ましい限りだ…。

そう思いながら、俺は受付に近づいた。

名前を告げると、受付に座っていたボランティアらしき在校生の女子生徒に、資料一式と番号札を受け取った。

すると、そのボランティア生徒が。

「えぇと、男子部に入学の新入生ですよね」

「そうですけど…」

「それなら、一旦校舎を出て、裏道を真っ直ぐ進んでください」

「…?」

意味不明な案内に、俺はその場で首を傾げた。

…一旦校舎を出ろって、どういうことだ?

他の新入生は、真っ直ぐ講堂に向かってるから。

俺も、てっきりそうだと思っていたのだが…。

「こちらは新校舎ですから。男子部の入学式は、旧校舎で行われるんです」

戸惑う俺に、受付の女子生徒が教えてくれた。
 
…そうなの?

それは…初めて知った。

あ、でも、そうか。

この校舎、数年前に建てられたばかりだから。

その前に使っていた古い校舎が、まだ残っているということなのだろう。

で、男子部の入学式はそっちだと…?

入学式別々なのか。男子と女子で。
 
女子生徒の花園には、野郎共など近寄ることも許さん、と?

…分かったよ。仕方ないな。

それならそうと、もっと早く知りたかった。

「そうですか。それはどうも…」

俺は、受付の女子生徒に頭を下げ。
 
案内された通り、華やかな新校舎を出て、裏道を通って旧校舎に向かった。
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