アンハッピー・ウエディング〜前編〜
旧校舎に続く裏道は、薄暗くて、曲がりくねった細い道だった。

しかも急な上り坂で、歩くだけでも結構キツい。

道、合ってるよな…?大丈夫だよな?

新校舎の方は、あちこちに学生ボランティアが配置されていて。

何処に行けば良いか、とか何でも質問出来たのに。

旧校舎に向かう裏道の道中は、ボランティアどころか、人っ子一人いない。

新校舎で暇そうに立ってたボランティア、何人か旧校舎に回してくれよ。

15分近く歩き続けて、ようやく学校らしき建物が見えてきた。

ここが…旧校舎?

「…」

新校舎とのあまりのギャップに、俺は思わず、呆然と立ち尽くしてしまった。

新校舎が白亜の宮殿だとしたら、旧校舎は団地のボロアパート同然だ。

灰色の壁は、所々ボロボロと外壁が剥がれ落ち。 

咲き乱れる花や小薔薇のアーチどころか、花壇の一つ、プランターの一つもない。

新校舎に比べ、旧校舎は一回りも二回りも小さくて。

華やかな雰囲気も、活気もなく、しんと静まり返っていた。

…今日、ここでこれから入学式が行われるんだよな?

本当に入学式あるんだよな?

俺、もしかして日付け間違えた?

お嬢さんかよ。

男子部と女子部で、入学式の日が違うとか?

いや、でも入学式の資料はもらったし。

かろうじて校門のところに、「入学式」と書かれた小さい手書きのプラカードみたいなものが貼り付けてあった。

…ってことは、やっぱりここで合ってるんだ。

新校舎の女子部の華やかな雰囲気と比べると、ここは墓場も同然だな。

これが、本当に聖青薔薇学園なのか…?

とても、さっきの新校舎と同じ学校とは思えんぞ。

案内してくれるボランティアの一人もいないし。

何処だよ、入学式の会場は。

立て札くらい用意しておいてくれよ。俺、ここに来たの今日がはじめてなんだぞ。

入学式の前から、早速迷子かよ。

あちらでもこちらでもないと、うろうろ歩き回り。

道を尋ねようにも、尋ねる人さえいない。

入学式なのに、他の新入生の姿も、父兄の姿も見えないなんて。

10分くらい彷徨って、俺はようやく、旧校舎の近くに体育館らしき建物を見つけた。

その体育館の入り口に、薄っぺらい紙に「◯年度入学式 会場」と書いて、貼り付けられているのを見つけた。

やっと見つけた。ここかよ。

覗いてみると、やっと人の姿を見つけた。

隅の方に、バスケットのゴールや卓球台が片付けてあるのが見えた。

やっぱりここ、体育館なんだ。

新校舎では講堂で、華やかに入学式なのに。

旧校舎では、体育館で入学式なんだな。

何だろう。凄いなんかこう…格差を感じる。
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