アンハッピー・ウエディング〜前編〜
…どうでも良いけどさ。

…パンツ、見えてんだけど。

全然嬉しくないサービスショットである。

まぁ、これは見なかったことにして。まず一番最初に、俺がやるべきことは。

「…掃除だな」

こう見えて俺は、結構綺麗好きなタイプなので。

こんなに散らかった家に住むなんて、想像しただけで吐きそう。

それに、こういうことをさせる為に、わざわざ俺をこの家に連れてきたんだろう?

だったらやってやるよ。召使いの真似事だって何だって。

家主を起こすのが先…なのかもしれないが。

生臭いゴミの匂いに耐えられないので、先に掃除だ。

掃除してたら、多分起きるだろう。

そうと決まれば、早速始めるか。

出来れば、今夜までには掃除を終えて、引っ越しの荷物を片付けたい。

「えーと、ゴミ袋。ゴミ袋…」

まずは、床一面に散らばったゴミを、一つ残らず回収しないとな。

試しに、手近にあったカップ麺の容器を拾ってみると。

容器の中に残っていた、茶色く濁ったスープの液体が、びちゃっ、とフローリングの床に溢れた。

うぉえ。

「きっしょ…」

折角の新築のフローリングが台無しだよ。

どうしてくれるんだこれ。匂いもきっついし。

そっちに転がってるペットボトルにも、グレープジュースらしき紫色の液体が残っている。

そっちの、逆さまになったスナック菓子の袋も。お菓子の食べかすが床に散らばっている。

分かるか?この気持ち悪さ。

吐き気を催すレベル。

これは…引っ越し早々、掃除のし甲斐があるぞ。

引っ越して早々、やるべきことは掃除かよ。

新築の家が台無し。

この女、よくこんな部屋で生活出来るな。

つーか、この女がここに引っ越してきてから、何日経ったんだ?

まだ一週間程度しか過ぎてないだろうに。もうこんなに汚したのか?

どうやら俺の人生のパートナーは、随分だらしない性格であるらしい。

お互いの衛生観念が合致しないパートナーと一緒に暮らすのは、なかなかにストレスだと思う。

…しかも、お部屋なのはリビングだけではなかった。

「…」

とにかく掃除用品を探そうと、キッチンに入ってみたら。
 
リビングに負けず劣らず、キッチンも酷い有り様だった。

凄く広くて、立派なキッチンのはずなのに…。

シンクには、汚れたマグカップが山になってるし。

キッチンの床にも、レトルト食品やカップ麺のゴミがいくつも落っこちている。

どうやらこの家のお嬢さんは、食事を全てカップ麺とレトルト食品で済ませているらしい。
 
無月院本家のお嬢さんが、カップ麺…?

…全然似合わね。
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