アンハッピー・ウエディング〜前編〜
話は分かった。

どうやら俺は、とんでもない男女差別高校に入学してしまったらしい。

今更知っても、今日という入学式の日を迎えてしまった以上、どうすることも出来ない。

…まぁ、知っていたとしても…いずれにしても、俺に選択肢はなかったんだけど。

ここしか来るところなかったし。

男女差別高校でも、高卒の資格をくれるなら何処でも良いよ。

…でも、それは俺に限った話であって。

「雛堂、お前何で…そんなこと知ってるんだ?」
 
こいつだって今日が入学式なのに、まるで在校生みたいに、この学校の事情をよく知ってんのな。 

図書館やパソコン室は使わせてもらえる、とか。

新校舎に入っただけで睨まれる、とか…。そういうことは、在校生じゃないと知らないだろうに。

多分他の新入生は、そこまで知らないと思うぞ。
 
オープンスクールに参加したからだろうか?

いや、でもオープンスクールじゃそこまで露骨なことは言わないだろうし…。

すると。

「あー、知り合いのお兄さんが、この学校の卒業生なんだわ。男子部の一期生なんだぜ」

とのこと。

あぁ、成程。知り合いにOBがいるのか。

それなら、学園の内部事情について詳しく知っているのも理解出来る。

しかも一期生とは。

いや、でも。それなら。

「そこまで教えてもらって知ってるなら、何でわざわざこの学校に来たんだ?」

俺は、他に選択肢がなかったから、仕方なく来たけど。

雛堂や、他の新入生達は…他の高校を選択することだって出来たはずだ。

ましてや、雛堂は、そのお兄さん…先輩に聞かされてたんだろ?

この学校が、お嬢様学校の皮を被った男女差別校であることを。

知っていて、わざと来たのか。

「別の学校…共学の学校に行けば、もっとマシな環境で…」

「うん、それは知ってる。でもこの学校ってさ、めちゃくちゃ学費が安いんだわ」

え、学費?

突然、ヘビーなお金の話が出てきたぞ。

入学式の席で、声を潜めているとはいえ、学費の話なんかしてるのは俺達くらいだろうなり

俺の学校にかかるお金は、全部無月院の本家が出してくれている。 

だから、俺は学費のことは全く知らない。

「…そんな安いのか?」

「…お兄さん、あんた本当に何も知らずに入学してんのな。大丈夫か?」

ごめん。

如何せん、裏口入学なもんで。

「まぁ良いけど…。…そう、めちゃくちゃ安いんだよ、ここ。そこらの公立より安くてさぁ」

「へぇ…」

全然、そんな風には思えないけどな。

聖青薔薇学園と言えば、自他共に認めるお嬢様学校だ。

当然、学費だってそれなりのものだと思っていたのに。

「女子部と男子部で、かかる学費は桁違いだって話」

そうだったのか。

学費がお高いのは女子部の生徒だけで。

旧校舎に押し込められた男子部の生徒の学費は、びっくりするほど安いと。

そう思うと、男女で扱われ方が違うのも納得出来る…か?

男女差別の理不尽なところを全部、学費の差で賄ってるんだろうな。

高い金を払ってる女子生徒は優遇され。

大して金を払ってない男子生徒は邪険にされる。
 
資本主義社会の縮図みたいな学校だな。
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