アンハッピー・ウエディング〜前編〜
成程。この学校が男女差別高校だって知っていながら、それでも雛堂がここに来たのは。

少しでも学費を抑える為。ここいらで一番お金のかからない高校だからなのか。

「うち貧乏だからさー。安いとこじゃないと進学もままならなかったんだよね」

そうか。俺の家と一緒だな。

結構ヘビーな家庭の事情を話してるのに、雛堂はあっけらかんとして口調だった。

何だか親近感が湧いてきたな。

人間、相手と共通点を見つけると好感が上がるらしいぞ。

家が貧乏という、あまり嬉しくない共通点だけど。

「それに、女子部はめちゃくちゃ偏差値高いけど、男子部の偏差値は大したことないしな」

そうなのか。

それも知らなかった…って、俺、改めて考えてみると。

今日から通う学校のこと、何も分からずに入学してたんだな。

見切り発車にも程があるだろ。

偏差値はそこそこ、学費は底値…成程。

それが、私立聖青薔薇学園男子部の「売り」って訳か。

学費が安いってだけで、一定層に需要はあるよなぁ。

俺や雛堂みたいな、金銭的に余裕のない家庭にとっては魅力的だ。
 
女子生徒と差別されても、隙間風の吹く旧校舎に押し込まれても。

それでも学費が安いなら、我慢出来なくもないだろう。

足元見てるよなぁ…。ブルジョアの発想って言うか…。

金持ちに小馬鹿にされてるような気がして、不愉快。

でも、文句言える立場じゃないから。

結局、不平不満を押し殺して、我慢して三年間耐えるしかないってことか…。

何とも世知辛いな。

でも、まぁ。

そういう事情があるなら、最初に心配したように。

金持ちなのを鼻にかけて、貧乏人を小馬鹿にするようなクラスメイトは、多分居ないだろう。

それだけは救いかもな。

…それに。

「そうか…。色々教えてくれて助かったよ」

「良いってことよ。今日から同じ屋根の下、毎日一緒に過ごすんだからさ。仲良くしようぜ」

雛堂みたいな、気さくに話しかけてくれるクラスメイトにも恵まれたしな。

環境はどうあれ、人間関係に恵まれたなら、それだけで上手くやっていけそうな気がするよ。
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