青の中に閉じ込められて
「あなたが俺の気持ちに頷いてくれない限り、着陸はしません。まあ、俺的には一緒に死ねるんですから頷いて貰わなくてもいいんですけどね。水谷さんが誰かのものになる前に心中できるんですから」

冷水を浴びせられたかのように葵の体が冷えていく。目の前で笑っている彼の顔が、これは冗談ではなく本気なのだと物語っていた。

「し、正気ですか?この飛行機を操縦されているのは、星空さんのお父様と先輩の方なんですよね?墜落したら……墜落してしまったら……」

二千メートル以上の高さから飛行機が墜落してしまえば、機体はバラバラになり、助かる術はどこにもない。葵の手が小刻みに震えていく。そんな中、キャビンアテンダントの一人が葵と彼方に駆け寄って来た。

「お願いです、水谷様!星空様の想いに応えてください!私、今度結婚するんです!こんなところで死にたくない!」

キャビンアテンダントは薬指に嵌められたダイヤモンドの指輪を見せ、叫ぶように言う。その目からは涙が溢れていた。
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