「きみを愛することはないし、きみから愛されようとは思わない」と宣言した旦那様と宣言された私の結末~それでしたら旦那様、あなたはあなたが真に愛する人とお幸せに~
「ほんとうにごめんなさい。貧乏性すぎるって笑って下さい。わたしには、もったいなさすぎるのです」
「貧乏性だなどと……。そこまで大切に考えてくれていて、その方がうれしいですよ」

 彼は、笑って許してくれた。しかも、うまい具合に取り繕って。

「アイ、謝るのはわたしの方です。ウジェの感想をきくというのは、あくまでも表向きにすぎません。いいえ、口実と言った方がいいでしょうか」

 彼は、テーブル上に両肘をついて身を乗りだしてきた。

 そのきれいな蒼色の瞳を見た瞬間、なぜか翡翠色の瞳を思い浮かべてしまった。

 そう。フェリクスのあのきれいな翡翠色の瞳を。
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