「きみを愛することはないし、きみから愛されようとは思わない」と宣言した旦那様と宣言された私の結末~それでしたら旦那様、あなたはあなたが真に愛する人とお幸せに~

あっという間だったんですけど?

 なにもかもがあっという間だった。

 気がつくと馬車内にいて、その中から夜のとばりのおりた森を眺めている。

 馬車内にいるのは、わたしだけではない。

 わたしの隣にはジョフロワが、向かいの席にはエルキュールが座っている。

 ラングラン侯爵家の屋敷を飛び出し、白馬でやって来たジョフロワに助けられた後、街から一番近くの
にある牧場でエルキュールと合流した。

 いいえ、違う。助けられたという表現は、適切ではないかもしれない。

 突発的に屋敷を飛び出したわたしが、やはり突発的に馬上から差し出されたジョフロワの手を取ってしまったにすぎない。そもそも、屋敷を飛び出しただけで助けられるようなことではなかったのだから。
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