「きみを愛することはないし、きみから愛されようとは思わない」と宣言した旦那様と宣言された私の結末~それでしたら旦那様、あなたはあなたが真に愛する人とお幸せに~
「ジョフロワ、大丈夫よ。大丈夫だから、放してくれないかしら?」

 わたしは、座面に彼におおいかぶさるようにして倒れている。

 この姿勢をどうにかしたい。

 それなのに、彼はまだわたしを解放しようとしない。

「殿下、追手です」

 そのとき、馬車の扉が勢いよく開けられた。

 馭者の青年二人が立っている。

 彼らは、ジョフロワを押し倒しているわたしを見ても顔色一つかえない。

 もっとも、月光の下彼らの顔色は真っ蒼にしか見えないのだけれど。
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